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季節性のインフルエンザにかかった社員が出社しようとした場合、会社として他の社員への感染リスクを避けるために出社を拒否せざるを得ない場合があります。その場合に注意すべきことについてまとめてみました。

病者の就業を禁止することができる根拠となる法律は?

病者の就業を禁止することができる根拠となる法律は次のとおりですが、該当するのはインフルエンザでも「新型インフルエンザ」や「特定鳥インフルエンザ」のみで、季節性のインフルエンザは該当しません。

◆労働者安全衛生法
第68条(病者の就業禁止)
事業者は、伝染病の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかった労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない。

◆労働安全衛生規則
第61条(病者の就業禁止)
事業者は、次の各号のいずれかに該当する者については、その就業を禁止しなければならない。ただし、第一号に掲げる者について伝染予防の措置をした場合は、この限りでない。
一 病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかった者
二 心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく憎悪するおそれのあるものにかかった者
三 前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものにかかった者
2 事業者は、前項の規定により、就業を禁止しようとするときは、あらかじめ、産業医その他専門の医師の意見をきかなければならない。

行政通達(昭和47年9月18日 基発601号の1)によると、「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病」とは、結核、梅毒、淋疾、トラコーマ、流行性角膜炎等の伝染性疾患のことをいい、上記1号から3号に該当する可能性のある社員がいる場合は、疾病の種類、程度、産業医等の意見等を勘案して、できるだけ配置転換、作業時間の短縮その他必要な措置を講ずることにより就業の機会を失わせないよう配慮することとし、やむを得ない場合に限り禁止することとされています。

◆感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
第18条(就業制限)
都道府県知事は、一類感染症の患者及び二類感染症、三類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者又は無症状病原体保有者に係る第十二条第一項の規定による届出を受けた場合において、当該感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該者又はその保護者に対し、当該届出の内容その他の厚生労働省令で定める事項を書面により通知することができる。
2 前項に規定する患者及び無症状病原体保有者は、当該者又はその保護者が同項の規定による通知を受けた場合には、感染症を公衆にまん延させるおそれがある業務として感染症ごとに厚生労働省令で定める業務に、そのおそれがなくなるまでの期間として感染症ごとに厚生労働省令で定める期間従事してはならない。

※因みに、一類感染症はエボラ出血熱等、ニ類感染症は結核、ジフテリア等、三類感染症はコレラ、細菌性赤痢等が該当します。季節性のインフルエンザは五類感染症に該当します。詳しくはこちらをご覧下さい。

感染症予防法において、都道府県知事より就業制限の通知を受けた場合は、会社の判断で就業を禁止せずとも国や地方公共団体の命令で就業が制限されることになります

いずれも、会社の判断で就業を禁止する訳ではないので、「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当しないため、休業手当(労働基準法第26条)を支払う必要はありません。

季節性のインフルエンザ罹患者を休ませるには?

学生の場合、季節性のインフルエンザに罹患すると学校保健法により出席停止の措置がとられますが、社会人の場合は法律で定められていません。

つまり、季節性のインフルエンザに罹患していても国の法律を根拠に出勤停止を命じることができないのです。

そこで、会社として他者への感染リスクを避けるためには、就業規則で「病者の就業禁止」について規定しておく必要があります。

【就業規則規定例】

第●条(就業禁止)
会社は、次の各号のいずれかに該当する者については、その就業を禁止する。
(1) 病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかった者
(2) 心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかった者
(3) 前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるもの及び感染症予防法で定める疾病にかかった者
2  前項の規定にかかわらず、会社は、次の各号のいずれかに該当する者については、その就業を禁止することがある。
(1) 従業員の心身の状況が業務に適しないと判断したとき
(2) 当該従業員に対して、国等の公の機関から、外出禁止又は外出自粛の要請があったとき
(3) 前項第1号以外の伝染するおそれのある疾病にかかった者又は疾病のため他人に害を及ぼすおそれのある者で医師が就業不適当と認めたとき
3  会社は、前二項の規定により、就業を禁止しようとするときは、あらかじめ、会社が指定する医師の意見を聴くものとする。また、従業員は、前二項に該当するおそれがあるときは、直ちに会社に届け出なければならない。
4 従業員は、同居の家族又は同居人が伝染するおそれのある疾病にかかり、又はその疑いのある場合には、直ちに会社に届け出て、必要な指示を受けなければならない。
5   第1項及び第2項の規定により、就業を禁止された期間は、無給とする。ただし、第4項に該当する場合の他会社が必要と認めるときは、特別休暇を付与し、又は在宅での軽易な業務を命ずることができる。

第●条(特別休暇等)
従業員が次の各号に掲げる事由に該当し、会社がその必要を認めたときは、当該各号に必要な時間又は日数の特別休暇を与えることができる。
(1) 疾病の感染を予防する必要があるとき(第●条の就業禁止に該当する場合を除く。)
以下省略

3  前項の特別休暇は有給とし、その期間については、通常の賃金を支払うものとする。

上記の規定例は、病院から就労不能の診断書は出されていないが、会社の判断で特別に休ませる場合に、有給の特別休暇を付与する規定となっています。

理由は、インフルエンザ罹患者であっても法律上休ませる必要のない者を敢えて会社の判断で休ませることになるため、「使用者の責に帰すべき事由による休業」により休業手当(労働基準法第26条)を支払う必要があるからです。

平均賃金の6割以上の休業手当を支払うか、有給の特別休暇を付与して通常の給与を支払うかは会社が任意に決めることができますが、就業規則に規定する以上はそれに従わなければなりません。

年次有給休暇を使って休ませることはできるのか?

法律や医師の指示ではなく、会社の判断で休ませる場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するため休業手当を支払う必要があります。

会社が強制的に年次有給休暇を取得させることはできません。

しかしながら、平均賃金の6割を休業手当として支払っても、従業員側からしてみると4割の収入減となるため、結果的に従業員が年次有給休暇を申請するケースが多いです。あくまでも従業員が申請して初めて年次有給休暇を使うことができるので、強制にならないようご留意下さい。