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社員への損害賠償請求~期間満了前の退職に違約金を求められるか?

投稿日: 2015-03-22 |
最終更新日: 2015-04-27 |

気になる労務

気になる労働基準法

賠償予定の禁止

労働基準法16条では、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と、事前に賠償金額を確定させる契約は違法だと定めています。これに違反すると同法119条に定められた、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる恐れがあります。例えば、期間の定めのある有期労働契約で期間満了前に退職する場合は罰金●万円を支払えという契約をした場合は労働基準法第16条の賠償予定の禁止(以下本条という。)違反となります。もちろん、事前に確定させるのではなく、事後に損失額を計算して社員に請求すること自体は問題ありません。

実務で問題になるケースとしては、いわゆる研修費用を会社が負担したが、社員が早期に退職してしまい、会社としては研修費用を払い損となってしまう場合です。この場合に研修費用を実損失額として、退職した社員に請求できるのでしょうか?答えは、研修費用を文字通り負担してあげる契約になっていたのか、立替金(いずれ回収すべき債権)として契約していたかで変わってきます。また、社員の自主意志に基づく選択(研修を受けることも受けないことも自由に選択できる)があったかどうかもポイントになります。

例えば、下記の判決(藤野金属工業事件)は参考になると思います。

【裁判所名】大阪高等裁判所【裁判年月日】昭和43年 2月28日【事件番号】昭和41年(う)第1306号

【判例要旨】

1.使用者が労働者の願出により熔接技量資格検定試験受験のため社内技能者訓練を実施し、使用者において、材料費を含む費用等を支弁し、その計算の範囲内において金額を三万円と定め、労働者から「合格又は不合格決定後、一年間は退職しない、もし退職するときは、検定試験に要した費用を会社へ返済する」旨の誓約書を入れさせ、その労働者が右期間就労するときには返済を免除し、かつ所定の報賞金を追加支給する旨特約した場合において、右費用の計算が合理的な実費であつて使用者側の立替金と解され、かつ、短期間の就労であつて労働者に対し雇用関係の継続を不当に強要する虞がない上、労働基準法一六条に定める違約金または損害賠償額の予定とはいえない。

上記は、研修費用を『貸した』としています。なので当然社員は返さなければいけない。ただし、会社は1年頑張ったら債権放棄するという内容です。費用を負担してあげたのではなく、費用を貸してあげたわけです。また、あくまで社員の願出によるもので、社員はこの試験を受けない選択もできます。下記の判例(河合楽器製作所事件)も参考になるでしょう。

「会社の養成所に研究生として入所する際その月謝(合計12万円)を会社より借り受け、貸与金は養成所卒業時に全額返済するが、会社の従業員となれば退職時まで返済を猶予されること等の特約をしたことについて、①貸与金契約は、養成所に入所する際純然たる貸借契約として定められたものであり、養成所を卒業して会社へ入社する際締結した雇用契約とは別箇の契約として締結されたものであること、②養成所卒業後会社へ就職するか否かは自由であり、会社へ就職すれば退職時まで貸与金12万円の返済が猶予されていたにすぎないこと、③養成所の授業料が月額1万円(合計12万円)であることも特に不合理な金額とはいえないことの理由をもって、右約定は本条に抵触しないとするもの。

 

この2つの判例からいえることは、費用負担をしてあげるのではなく、費用を貸してあげるというスタイルを取れば、事後に回収できる可能性が高くなるということです。繰り返しですが、社員にとって業務として強制される研修費用を回収することは難しいです。下記(サロンドリリー事件)が参考になるでしょう。美容師見習いとして入社した者から講習手数料として費用を支払う契約をさせたケースですが、業務に必要な技術について費用を負担させることは問題があるといえます。

【裁判所名】浦和地方裁判所【裁判年月日】昭和61年 5月30日【事件番号】昭和60年(ワ)第502号

【判例要旨】

1.美容指導を受けた従業員が会社の意向に反して退職したときは、入社時にさかのぼつて月額四万円の講習手数料を支払う旨の契約は、労働者の自由意思を拘束して退職の自由を奪う性格を有するものであり労働基準法一六条に違反する。

 

損害賠償額を決めずに、賠償することのみを雇用契約に定めることはOK

労働基準法では、賠償額をあらかじめ決めることを禁止しているだけで、賠償することがある(金額の記載はない)ということを社員に伝えること自体は問題はありません。繰り返しますが、実損失額について請求をすることは可能です(回収ができるかどうかは別ですが)。社員への牽制効果を図る意味で、契約書に『債務不履行により会社が損害を被った場合は、その実損害額に応じて賠償を請求する』と記載することは問題はありません。現実には、この記載をすることで回収可能性を残すということしかできないでしょう。

 

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