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知っておきたい「みなし労働時間制」のポイント

投稿日: 2015-04-05 |
最終更新日: 2015-04-26 |

気になる労務

気になる労働基準法

みなし労働時間制とは?

「あらかじめ決めた時間」労働したものとみなす制度のことを「みなし労働時間制」といいます。外回りの営業職や出張など、正確な労働時間を把握することが困難な場合や、仕事の進め方や時間管理を従業員に任せた方が成果を出しやすい業種では、導入を検討してみると良いでしょう。

 

3つのみなし労働時間制を整理してみよう

① 専門業務型裁量労働制
研究開発やデザイナー、コピーライター、情報処理システムの分析または設計の業務(プログラマーやシステムエンジニアは含まない)のように、成果と労働時間の関係が比例しない職種に 適用する制度です。事前に労使協定で決めた労働時間で割り切って集計します。(労基法38条の3)

② 企画業務型裁量労働制
経営計画、データ分析等、事業運営に直接影響するような業務に適用する制度です。「労使委員会」という組織を作り、そこで決めた労働時間で割り切って集計します。(労基法38条の4)

③ 事業場外労働のみなし労働時間制
主に外回りの営業職に適用する制度です。労働時間の管理が難しい場合、「定時」または「業務に必要な時間(定時以上)」で労働時間を割り切って集計します。(労基法38条の2)

 

専門業務型裁量労働制とは・・・

会社が業務の進め方や時間配分を指示せず、本人の裁量で仕事の進め方や勤務時間の計画を立てられる場合に、「労使協定にて定めた時間」労働したものとみなす制度です。みなし労働時間の決め方は、導入前の労働者の平均労働時間または、定時と決める企業が多いようです。成果を出すまでの過程が労働時間に比例せず、自分の裁量で仕事を進めた方が、生産性がUPするような場合は、導入するメリットがあります。なお、労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

 

企画業務型裁量労働制とは・・・

上記の専門業務型裁量労働制と類似した制度で、「企画業務型裁量労働制」があります。対象業務は、事業の運営に大きな影響を及ぼす企画、立案、調査、分析の業務であって、会社が業務の進め方や時間配分の決定などに関し、具体的な指示をしないことが必要です。専門業務型裁量労働制と大きく異なる点は、1)対象業務を遂行する知識・経験を有する者であること、2)導入にあたり労働者と社長で構成された労使委員会の決議が必要なことです。対象労働者は、少なくとも3~5年の職務経験があることが必要で、未経験の新卒社員は労使委員会の決議があっても認められません。なお、2)の決議を労働基準監督署に届け出る必要があります。対象業務となり得る業務は、下記のとおりです。

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事業場外のみなし労働時間制とは・・・

事業場外労働のみなし時間は、「定時」または「業務に必要な時間(定時以上)」のどちらかで設定します。みなし時間は、平均的にかかる時間や必要と想定される時間で決めます。「定時」と設定した場合、実際に残業をしていても残業代を払う必要ありません。なお、下記のいずれかに該当する場合は、この制度は使えません。携帯電話の普及している現在では、この制度は事実上使えないと考えた方がよいと思われます。

①グループで事業場外労働をする場合で、そのメンバー中に労働時間を管理する者がいる場合
②無線やポケットベル等によって随時、使用者の指示を受けながら労働している場合
③事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示通り業務に従事し、その後事業場に戻る場合 (昭63.1.1基発1号)

裁判でも、客観的に労働時間を管理できる状態であるにもかかわらず、みなし労働時間制を会社が濫用して残業代を支払っていないとして、下記のように会社が敗訴するケースも多いようです。

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事業場外のみなし労働時間制を適用するためには、訪問先、帰社時刻等については管理せず、社員に任せていることが重要なポイントになっています。なお、みなし労働時間が「定時」の場合は、就業規則の定めが必要で、「業務に必要な時間(定時超)」の場合は、労働基準監督署への届出が必要です。

定額残業代で、実質的にみなし労働時間制を実現する?

上記3つの制度が適用できない社員に、実質的にみなし労働時間制と同じ効果を持たせる方法として、定額残業代という方法があります。残業があっても、一定の時間を超えるまでは追加の残業代を支払わなくてもよくなります。ただし、長時間労働を前提とした定額残業代は、否認されています。(大庄店員過労死事件京都地裁平成22.5.25)定額残業代の支給方法としては、1)基本給に残業代を含めて支給する方法と、2)○○手当を残業手当の見合い分として支払う方法があります。

〈定額残業代制度のポイント〉
① 残業時間を明確にする(例;20時間)
② ①の残業時間を超えた場合、差額を支払う
(例;20時間分の手当を支給し、実際は25時間残業した場合、5時間分の残業代を支払う)
③雇用契約書にて①の残業時間分の手当を明確にする

上記①②③が明確でないと「残業代が支払われていない」とみなされてしまい、結局、残業代を請求される可能性があります。みなし労働時間制は残業代を節約するメリットがありますが、単に人件費削減のためだけに導入してしまうと、今まで残業代が支給されていた人は給料が減り、モチベーションの低下につながってしまう恐れもあります。しかしながら制度としては、「労働時間イコール仕事の成果」とはならない仕事には適した制度ではあります。

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