派遣スタッフが社会保険・雇用保険未加入の場合の派遣先のリスク
派遣スタッフを受け入れる場合、派遣先は派遣スタッフが社会保険・雇用保険にきちんと加入しているかチェックすることが求められています。それでは、社会保険に加入していない派遣スタッフを受け入れた場合、派遣先にリスクはあるのか?今回は、派遣先のリスクについてまとめてみました。
派遣先は雇用保険・社会保険の加入確認義務があります
社会保険・雇用保険の加入は派遣元会社の義務ですが、派遣先にも社会保険の加入について確認する義務があります。(派遣先が講ずべき措置に関する指針)
また、理由が適正でないと考えられる場合には、派遣元に対し労働・社会保険に加入させてから派遣するよう求める必要があります。
具体的には・・・
①既に加入している者・・・健康保険被保険者証、雇用保険被保険者証のコピーを確認
②加入手続き中の者 ・・・派遣先通知書に「○月○日届出予定」と記載がある場合は、その日以降に下記の書類を確認
(1)提出済みの「社会保険・雇用保険被保険者資格取得届」のコピー
(2)後日健康保険被保険者証、雇用保険被保険者証のコピー
③未加入の者・・・加入しない理由を確認
そして、派遣先は確認したことを「派遣先管理台帳」に記載する必要があります。
(派遣先管理台帳の例)
◆雇用保険・社会保険の被保険者資格取得届の提出の有無
雇用保険 有
健康保険 無(ただし、現在、必要書類の準備中であり、今月の○日には届出予定)
・・・○月○日手続完了を確認、有
厚生年金保険 無(ただし、現在、必要書類の準備中であり、今月の○日には届出予定)
・・・○月○日手続完了を確認、有
未加入の派遣スタッフを受け入れた場合のリスク
派遣先は、社会保険に加入していない派遣スタッフを受け入れても特に罰則はありません。
ただし、社会保険加入の確認を怠ると、指導の対象になりますし、確認の記録を派遣先管理台帳に記載しないと、罰則の対象にもなります。
派遣先管理台帳に関する罰則(派遣先)
派遣先管理台帳を所定の方法により作成、記載、保存若しくは通知しなかった場合(法第42条)、派遣先は、法第61条第3号に該当し、30万円以下の罰金に処される場合がある。
健康保険証等を派遣先に提示する場合は派遣スタッフの同意が必要です
被保険者証等の写し等を提示する場合は、派遣スタッフ本人の同意を得ることが必要です。同意が得られなかった場合は、生年月日、年齢等を黒塗りするとともに、派遣先に確認後には派遣元に返送することを依頼する等個人情報の保護に配慮することが必要です。
社会保険に加入済みであると虚偽の通知をした派遣会社のリスク
例えば、社会保険に加入させていない(加入予定もない)にも関わらず、派遣先通知書に「加入済み」と記載した場合、派遣元は、虚偽の通知をしたとして、司法、行政処分の対象になります。
派遣先への通知義務違反(派遣元)
(イ)派遣先への通知を行わなかった又は通知を所定の方法で行わなかった場合又は虚偽の通知をした場合(法第35条)は、法第61条第4号に該当し30万円以下の罰金に処せられる場合がある。
(ロ)また、許可の取消し(法第14条第1項)、事業停止命令(法第14条第2項)、改善命令(法第49条第1項)の対象となり、(イ)の司法処分を受けた場合は、許可の取消しの対象となる。
(ハ)派遣先への通知義務違反は、(イ)及び(ロ)のように司法、行政処分の対象となるが、労働者派遣契約自体は有効に成立、存続するものである。
派遣元が許可取消し、事業停止命令を下された場合、対象の派遣会社から労働者を派遣することができなくなるため、派遣先への影響は計り知れません。今回の改正で「健康保険証・雇用保険被保険者証のコピー」の確認まで求められたのは、それだけ虚偽の通知が横行していたからです。適正な派遣会社との取引こそが派遣先のリスク回避に繋がるといえるでしょう。
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