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許可基準の1つである安全衛生教育の実施とは?

投稿日: 2016-01-16 |
最終更新日: 2016-01-16 |

派遣事業者 特化記事です

派遣法改正

派遣法改正により、許可基準の1つに安全衛生教育の実施体制の整備が設けられたこと、安全衛生教育の結果を毎年6月に提出する事業報告書にて報告することが義務付けられました。

派遣スタッフの雇入れ時・作業内容変更時の安全衛生教育の実施義務は、派遣元にあります。製造業など工業的な業種に派遣する場合だけでなく、販売や事務職など労災が発生する可能性が低い業務で派遣する場合も安全衛生教育が必要です。具体的にどのような教育を行えばよいのか?今回は、雇入れ時・作業内容変更時の安全衛生教育についてまとめてみました。

雇入れ時・作業内容変更時の安全衛生教育 (安衛法第59条第1項、安衛則第35条)

派遣元は、派遣スタッフに下記の教育を実施することが義務付けられています。

① 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱方法に関すること
② 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱方法に関すること
③ 作業手順に関すること
④ 作業開始時の点検に関すること
⑤ 就労する業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること
⑥ 整理・整頓及び清潔の保持に関すること
⑦ 事故時等における応急措置及び退避に関すること
⑧ その他就労する業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

※製造業など工業的な業種に労働者を派遣する場合には、原則として上記①~⑧の全てについて教育する必要がありますが、職業訓練を受けた者など既に教育項目の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる者についてはその部分に関する教育を省略することができます。(安衛則第35条第2項)ただし、省略が可能であることを資料などで客観的に確認することが必要です。 また、非工業的な業種に派遣される労働者については、上記①~④の教育項目について省略することができます。(安衛則第35条第1項ただし書き)

非工業的な業種に派遣する場合の安全衛生教育とは?

非工業的な業種に派遣する場合は、上記⑤~⑧の教育を実施する必要があるが、具体的にどのような教育が必要なのか?項目別に事例を挙げてご説明いたします。

⑤ 就労する業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること

非工業的な業種でも、職場環境が悪いと疾病など身体に影響を及ぼす可能性があります。働く人々が病気にならないために、『労働衛生の3管理」すなわち、①作業環境管理、②作業管理、③健康管理が重要な管理活動となります。具体的には、次の項目に従って教育すると良いでしょう。

空気・温度 1 適切な温度管理
2 適切な湿度管理(40%~70%程度が望ましい)
採光 1 蛍光灯など、作業面の照度。明暗の対称。まぶしくないか。
2 照明器具や窓面の手入れ
 清潔 1 ネズミ、害虫(ゴキブリ、ダニ、カなど)の駆除・防止
2 茶殻、残飯、タバコの吸殻の処理
3 更衣室、休憩室、食堂、洗面所、便所、給湯室の清掃
 救急用具 1 担架、救急箱の置き場所、維持管理。
2 上記の管理者の把握。
 廃棄物 1 廃棄物(ごみ、茶殻、吸殻など)の捨て場所。
2 捨て場所の清掃。
 色彩 1 掲示物、標識など必要な掲示の確認。
2 不要な掲示物の除去
 防火 1 消火器の設置場所確認
2 避難経路の表示確認および経路の整備
3 火災報知機の確認

また、重量物を扱う仕事(重荷、介護職、保育職等)は、腰痛を訴える人が多く見られます。そのような職場へ派遣する際は、腰痛対策について教育することも大切です。

上記のほかに、健康診断やストレスチェック制度の重要性について、若い人にも納得しやすいように説明しておくと良いでしょう。

⑥ 整理・整頓及び清潔の保持に関すること

安全の基本である4S(整理・整頓・清掃・清潔)の確保は、職場空間の効率的利用を図り、労災防止に繋がります。具体的に次の項目に従って説明しておきましょう。

作業場・事務所 1 床面の清掃(水や油、砂などがたまっていないか確認)
2 机の上、下の整理整頓
3 書庫の中、上などの整理整頓
4 机やイスの確認(破損はないか)
5 清掃用具の確認
休憩所・ロッカールーム 1 机の上下の整理整頓
2 灰皿の水、吸殻、湯茶道具の整理整頓
3 ロッカールーム内の清掃、破損確認

労災発生の可能性が低い事務所内でも、床に置かれた物につまづいて転んだり、シュレッターなどの機械に巻き込まれたりして思わぬケガをする可能性があります。会社内のケガは全て労災と言っても過言ではありません。労災対策のためにも、安全衛生教育を徹底しておきましょう。

⑦ 事故時等における応急措置及び退避に関すること

非工業的な業種でも、疾病や負傷者が発生したり、地震・火災等の災害に遭う可能性は多いにあります。非常事態でも冷静に対処できるよう、応急処置や退避について教育しておきましょう。

負傷・疾病時の注意事項 1 「119」番に速やかに連絡する。
2 患者を楽な姿勢にさせ、動かさないように注意する。
3 止血や呼吸停止時の対応について教育する。
地震発生時の対応 1 落下物、転倒物からすばやく身を守る。
2 非難口の確保
3 火の始末
4 屋外に退避等

人は想定外の事態が発生すると混乱やパニックを引き起こします。しかし、上記の事態が全く起こらないという保障はどこにもなく、リスクアセスメントでは想定可能な事態であるといえます。パニックにより、二次災害を引き起こさないためにも、必要な教育をしておきましょう。

安全衛生教育は何時間行えばよいのか?

キャリア形成に資する教育訓練は、1年以上雇用見込みのあるフルタイム社員なら概ね8時間以上、それ以外は労働時間に比例した時間分の教育が必要ですが、安全衛生教育については定められていません。会社の裁量で行います。原則として、許可申請または更新申請時に提出する「労働者派遣事業計画書」に基づき実施します。(既に許可取得済みで更新年ではない会社は、労働者派遣事業計画書の提出義務はありません。)

安全衛生教育の実績は、毎年6月に労働局へ提出する「労働者派遣事業報告書(年度報告)」にて報告が必要です。しかも、上記の各項目ごとに派遣スタッフ1人あたりの平均実施時間を記載しなければなりません

【下記は記載例です】

WS000009

安全衛生教育を実施しないとどうなるか?

安全衛生教育は、更新申請までに実績が無い場合は、労働局の派遣法に基づく指導の対象になります。場合によっては、更新の許可がおりない可能性もあります。さらに、労働局は、安全衛生教育の未実施等を確認した場合は、都道府県労働基準部担当部門に連絡することとされており、労働基準監督署からも安全衛生法に基づき指導されることになります。

安全衛生教育の費用・給与は?

安全衛生教育は、会社の義務として業務時間中に行うものであるため、「無償(教育費用(テキスト代含む)をスタッフから徴収しない)」かつ「有給(労働時間として給与発生)」で行う必要があります。

派遣先に安全衛生教育を委託することも可能です

製造業など工業的な業種へ派遣する場合、機械や安全装置、作業手順など派遣元ですべて教育するのは非現実的であるといえます。そのような場合は、派遣先に安全衛生教育の実施を委託することが可能です。

派遣元は教育の実施を委託した場合は、実施結果について確認することが必要とされています。

安全衛生教育を実施したら、派遣元管理台帳に記録しておきましょう

義務ではありませんが、安全衛生教育の実施記録を派遣元管理台帳に記録しておくことをお勧め致します。(派遣先が安全衛生教育を実施した場合は、派遣先・派遣元ともに管理台帳に記録。)理由は、毎年6月に報告する「労働者派遣事業報告書(年度報告)」にて報告が必要だからです。派遣元管理台帳に記録しておけば、①いつ、②誰に、③何の項目を④何時間実施したという記録が残り、事業報告の際に慌てる必要がありません。

 

安全衛生教育が派遣事業の許可基準に追加され、次回更新時にも影響を及ぼすこととなり、教育の重要性が高まっています。非工業的な業種だからといって全て省略できるものではありません。今のうちに社内体制を整備されることをオススメ致します。

 

参照:製造業における派遣労働者に係る安全衛生管理マニュアル(平成21年10月)

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