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2つの局長通知、どちらを採用すべき?

投稿日: 2019-05-01 |
最終更新日: 2020-02-10 |

派遣法改正

その他

一般労働者と派遣労働者の賃金比較ツールが公開

厚生労働省HPにて、一般労働者と派遣労働者の賃金比較ツール のExcelシートが公表されています。

 

2020年4月1日以後の派遣スタッフの時給を決める上で重要なツールになります。

ツール使用における実務的な疑問点はこれから出てくると思いますが、運用上知っておいた方が良いことをお伝えいたします。なお、基準となる統計が平成29年のものとなっているので、実際に適用される統計は平成30年のものとなります。ただ、29年と

30年で賃金が下がるということは考えにくいので、最低でも29年で計算した賃金は支払うことになると考えて良いでしょう。目安を知る意味で有効です。

派遣スタッフ向けの賃金を労使協定方式で決める場合、通常は局長通知の額を基準とします。この局長通知とは、①賃金構造基本統計調査 に基づく職種別賃金 と②職業安定業務統計に基づく職種別賃金 の2つです。派遣元会社は、どちらを採用しても構いません。

この2つ以外の公的な統計を採用することも可能としています。民間統計の使用も認められてはいますが、集計項目ごとに実標本数を一定数以上確保するよう標本設計した上で、無作為抽出で調査したものであることが求められます(実務上は使用に耐える民間統計というのは難しいと思われます。)

この局長通知に地域指数を乗じて、賞与込みの時給を算定します。なお、地域指数は、その派遣スタッフが実際に勤務する(派遣先)によって決まります。

最低賃金(および県ごとの特定最低賃金)を下回る時給設定は当然できませんが、昨今の人材不足の環境で、実際の求人時給の相場が最低賃金以下というケースは存在しないと思いますので、ここは気にしなくても良いでしょう。

派遣元会社としては、マージン率を確保するためにも、できれば賃金の引き上げは無理のない範囲に留めたいものだと思います。派遣先に引き上げ分のコスト上昇を負担してもらうにも、合理的な理由が求められる場面も出てくるでしょう。

そのときに、上記2つの局長通知のどちらを採用すべきかという疑問が生じます。

賃金構造基本統計調査 > 職業安定業務統計 か?

結論としては職種によって異なるです。ちなみに職業安定業務統計で示される時給は、実際の賃金そのものではなく、ハローワークでの求人賃金の額です。とはいえ、全職種平均では職業安定統計業務の方が低いです(基準値1,141円。賃金構造基本統計では1,225円)

試しにツールで、機械組み立ての職業 で愛知県豊田市、勤続3年での派遣スタッフに払うべき時給を計算してみました。結論としては、賞与込みの時給(退職金上乗せなし。通勤費実費支給)は下記となりました。①<②の結果となりました。

①賃金構造基本統計での時給

1,272円(821 機械組立工)

②職業安定業務統計での時給

1,402円(57 機械組立の職種)

もう1種類見てみましょう。今度は自動車組み立ての職種です。今度は①>②です。

①賃金構造基本統計

1,642円(829自動車組立工)

②職業安定業務統計での時給

1,381円(584自動車組立工)

ただ、職業安定業務統計の方が職種の分類が細かい(つまり職種が多い)ので、より現実的な細分になっているとも言えます。該当業種が探しやすいという視点では職業安定業務統計の方が使いやすいでしょう。

例えば、いわゆる軽作業員というカテゴリーでは職業安定業統計では、782軽作業員(ちなみに上記と同条件での時給1,411円)は分類がありますが、賃金構造基本統計では見当たりません。

なお、単純に勤続が3年という前提で試算しましたが、派遣スタッフの時給(給与・賞与部分)を決めるにあたって、その派遣スタッフが同一の職種の一般労働者の勤続何年目に当たるかは、労使で議論して決めるという表現になっていますので、必ずしも勤続年数とイコールでなくとも良いということだと判断できます(不合理な待遇差解消のためい点検・検討マニュアル~改正労働者派遣法への対応~83ページより)。

 

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