残業時間の端数処理のポイント(30分未満切捨ては可能なのか?)
時間外労働について30分未満切捨てというルールで処理を行っていますが、問題はありますか?
このようなご相談をいただくことがよくあります。確かに定時に帰れるはずの仕事量なのに、ゆっくり仕事をされて毎日定時の15分後にしかタイムカードを押さないという状況が続けば、1日15分×1ヵ月労働日数22日とすれば330分の残業となり、時給1000円とすれば、1000円×3.5時間=3500円のコストがかかります。これが社員一人であればまだしも、10人いれば35000円。年間42万円の人件費増加となります。法定福利費も含めればコストは16%程さらに増すので、年間50万円近いコストになります。30分未満は切り捨てたい。その気持ちは分かります。しかし・・・
労基法第24条第1項は、『賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない』と定めています。つまり、残業時間1分についても理屈上はすべて残業代を払えということになります。
ただし、この原則には例外が設けられています。通達(昭63・3・14基発第150号)では、時間外の端数については、「1カ月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること」が認められています。
ですから、1カ月単位で30分未満を切り捨てることは、法に反しません。ただし、あくまで1カ月単位の話であり、1日単位の四捨五入処理や切捨ては認められていません。1分単位で集計する必要があります。
余談ですが、給与の常識・考え方を決めているのは、実は経営者の前職での労働環境であることが多いです。つまり、『前の会社ではこうだったから、うちもこれで良いはずだ』と思い込んでしまっているケースです。脱サラして自分が会社を立ち上げたときに、前職の給与体系をそのまま流用してしまうパターンです。意外とこういったケースは多いのではないでしょうか・・・?