4年目以降のキャリアアップに資する教育訓練
27年の改正派遣法により義務付けられたキャリアアップに資する教育訓練。最初の3年間はフルタイム勤務者であれば毎年概ね8時間が必須ですが、4年目以後はどうなのでしょうか?結論としては 時間が少なくなっても良いのでしょうが、なくしても 良いかというと話は別です。
段階的かつ体系的な教育訓練の実施
派遣法は、派遣会社に対し、派遣社員が段階的かつ体系的に、派遣就業に必要な技能及び知識を習得することができるように、教育訓練を実施する義務を課しています(派遣法第30条の2)。
労働者派遣事業関係業務取扱要領(平成28年1月厚生労働省職業安定局)抜粋
第3の1の(8)許可要件(許可の基準)
ロの②の(イ)のd
(a)派遣労働者全員に対して入職時の教育訓練は必須であること。また、教育訓練は、少なくとも最初の3年間は毎年1回以上の機会の提供が必要であり、その後も、キャリアの節目などの一定の期間ごとにキャリアパスに応じた研修等が用意されていること。
(b)実施時間数については、フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、少なくとも最初の3年間は、毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会の提供が必要であること。
上記からもわかるように、『その後も、キャリアの節目などの一定の期間ごとにキャリアパスに応じた研修等が用意されていること』とありますので、4年目以降の教育訓練を無くしてしまうと法の趣旨に反してしまいます。
但し、最初の3年間は必須ですが、その後も毎年教育訓練が必要とまではされていないので、4年目、5年目、6年目・・・といった毎年実施する教育訓練計画でなくてもOKということになります。
具体例として、次のような教育訓練体系が考えられます。
階層別対象者 | 教育訓練講座名 | 教育訓練の目的 |
新入社員 (職務経験1~3年目) |
新入社員教育 | 入社時教育(ビジネスマナーを身につける) スキルアップ(派遣先の職務に関する教育) フォローアップ |
若手社員 (職務経験5年目) |
若手社員教育 | 職務遂行スキルの習得 新人の教育係ができる |
中堅社員 (職務経験10年目) |
中堅社員教育 | 管理監督者の役割と立場をフォロワーの立場で 理解し行動できる |
新任管理・監督者 (新任係長) |
新任時研修 | 新任役職者としての役割を認識し、目標達成に 向けて行動できる |
監督者 (監督職務経験2年目) |
監督者研修 | 監督者としての役割を認識し、現場管理を進め るための行動ができる |
管理者 (課長・係長) |
管理者研修 | 管理職としての役割を認識し、問題解決対応、 人事考課、部下のマネジメントができる |
派遣社員としてより高度な業務に従事すること、派遣としてのキャリアを通じて正社員として雇用されることを目的としているなど、派遣社員のキャリアアップに資する内容である必要があります。
因みに、厚生労働省が交付しているマニュアルの記載例も、4年目以降の計画がきちんと定められており、訓練時間は4時間とされています。
<労働者派遣事業を適正に実施するために -許可・更新等手続きマニュアル-抜粋>
派遣会社として派遣社員をただ派遣先に送り出すだけではなく、雇用者として派遣社員の人材育成、雇用を維持することが求められています。制度としてせっかく教育訓練計画を作成するのであれば、中途半端な教育を行うよりも本格的な訓練計画を作成し、スキルの高い派遣社員に育てることをお勧めします。
スキルの高いスタッフであれば、必然と派遣料金も高く設定することができますし、会社のネームバリューも上がります。教育訓練を活用した助成金(企業内人材育成推進助成金、キャリア形成促進助成金)もありますので、ぜひご検討いただけたらと思います。