頭を悩ませる教育訓練(キャリアアップ措置)について
派遣元会社は、有期雇用・無期雇用に関わらず派遣スタッフに対して教育訓練を実施する必要があります。教育訓練の内容および実施した日時は、派遣元管理台帳に記載することが必須となります。
教育訓練を過去にやったことがある派遣スタッフへの再教育は不要
派遣元会社で、過去の在職中に教育訓練をしたことがあるスタッフについては再教育は不要です(もちろん、やっていただいてもOK。ただし教育訓練の時間は給与を支払うことが求められます。)。
もちろん、過去の派遣元管理台帳に、その教育を実施した記録があることで再教育の必要・不要は判断されます。派遣元管理台帳の記載はやはり重要になりますし、派遣元管理台帳の保管義務である3年を経過した後でも、できる限り教育訓練の実績を後で把握できるように努めた方が良いでしょう。
派遣元事業主以外で受けた教育訓練も有効
例えば、別の派遣会社Aで勤務していたスタッフが、現在の派遣元会社Bでの教育カリキュラムのメニューと同等のものを受講済みだと判断できる場合には再教育は不要です。これは、教育訓練をしなくて済む対象者は、前述の過去に同じ派遣元事業主の下で同じ内容の訓練を受けた者または訓練内容にかかる能力を十分に有していることが明確な者については、訓練の受講済みとしても差し支えないことになっているためです。
とはいえ、その判断基準は難しいところです。例えば一言で『コミュニケ―ション研修』といってもA社とB社の内容が同じであるとは言い切れないからです。何らかの判断基準を自社で用意してことが望ましいです。業務取扱要領に記載されている例を参考に判断基準を設けておきましょう。
『訓練内容にかかる十分な能力を有していることが明確な者』の例示
①資格取得のための訓練については、既に資格を有している者
②初めて就労する者を対象とした社会人用マナー研修については、正社員等の経験がある者
①については資格の有無で判断できるので問題ないですが、②ですとマナー研修以外の研修では判断が難しいといえます。例えば、いろんな派遣会社の教育訓練計画に記載されている、EXCEL等のPCスキルの研修などは、正社員経験があるから明らかに分かっているとも言い難いところではないでしょうか?
このようなケースで、明らかに十分な能力を有しているから訓練が不要だと判断するためのツールとして、『実力判定テスト』のようなツールを用意することは有効だと思われます。EXCEL等のPCスキルであれば、下記のような判断基準であれば問題ないと推定されます。
①過去の勤務先での職種が事務・営業などのパソコンを常時使用すると認められ、かつその勤務実績が1年以上ある者
②EXCELスキル確認試験に合格した者
②は自社で作成する または何らかの外部試験を利用することになります。
いずれにしても、何らかの客観的で統一的なルールの下に、再教育の必要性を判断していくことは求められるでしょう。教育訓練は有給・無償で行う必要がありますので、そのコスト負担は大変なことです。スタッフにとっても既に分かり切っていることなのに研修を受けることは、いくら給与が貰えても苦痛でしょうから、何らかの判断基準を設けることは会社にもスタッフにも優しいと言えるでしょう。
なお、許可申請・更新の年度の教育は、計画に記載したとおりに行う必要がありますのでご注意ください。安易に考えた教育メニューで許可を受けることは避けたいところです。確実に実施することが必要です。