派遣スタッフの賃金決定方式
現状の派遣スタッフの賃金決定のあるべきスタイル
この記事を投稿する現在(2017年9月18日)においては、派遣スタッフの賃金を決定するときには、下記の努力・配慮義務が派遣元・派遣先に課されています。
先ず、派遣元においては、下記のように派遣元事業主が講ずべき措置として、労働者派遣事業関係業務取扱要領 にも明記されています。
簡単に言えば、派遣先で同じ仕事をしているヒト(派遣先の直接雇用者)の時給に近い水準で派遣スタッフの賃金は決めると良いね、あと、本人の能力(成果・意欲等)に見合った賃金にすると良いね~ ということですね。努力義務なので「やってくれると良いよね」というスタンスではあります。
そして、派遣先では派遣元での同業務に携わる直接雇用者の賃金水準を掴むことが難しい(派遣先の求人広告などで推定することは可能ではありますが)ため、派遣先にも下記の配慮義務があります。
派遣先は、派遣元事業主の求めに応じ、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する当該派遣先の労働者の賃金水準に関する情報を提供するよう配慮しなければならない (法第 40 条第 5 項) 。
この場合、提供すべき情報としては、派遣先に雇用される同種の業務に従事する労働者に関する賃金水準についての情報が望ましいが、対外的に提供することに支障がある場合は、次の(イ)、(ロ)あるいはこれに準じた情報であっても差し支えない。
(イ) 派遣先において同種の業務に従事する労働者が属する職種(雇用グループ)について求人情報を公表したことがある場合にはその情報
(ロ) 派遣先において同種の業務に従事する労働者が属する職種(雇用グループ)に係る一般的な賃金相場(業界における平均賃金等)
現実には、派遣元が、上記(イ)(ロ)をインターネット等で自主的に調べるケースが多いのだと推測されます。いずれにしても、同一労働・同一賃金という思考のもと、何らかの根拠をもって賃金は決定すべきと記されているわけです。
今後の派遣スタッフの賃金決定方式はこうなる?
2017年9月12日に労働政策審議会より公表されている議案が参考になります。原則は、従来の努力・配慮義務が、実施義務に変わる予定です(派遣先においても)
ただし、労使協定により派遣労働者の範囲を特定したうえで、次の方式(イ・ロ共に満たす)による賃金決定が認められる予定です。
イ 派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額として厚生労働省令で定めるものと同等以上の賃金の額となるものであること。
ロ 派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等の向上があった場合に賃金が改善されるものであること。
イは、厚生労働省が賃金単価を設定してくれることになります。派遣会社にとっては、業種ごとの最低賃金が事実上定められるイメージですね。とはいえ、設定に悩むことはなくなります。
問題は、ロです。これを端的に言えば、評価制度と連動する賃金制度を設けなさいということになります。派遣スタッフの評価(格付け)が必要になります。しかも、職種が変われば当然、評価もやり直すことになります。
なお、この議案の実施時期は、早くとも平成31年4月1日以後になる見込みです。とはいえ、平成30年4月1日より改正労働契約法の影響(いわゆる無期転換ルール)を考えて、無期雇用となる派遣スタッフの賃金体系を有期雇用の派遣スタッフや正社員とは、別個に設ける派遣元会社も多いようです。弊社にも、問い合わせをいただく機会が多くなっています。
そのため、派遣スタッフ向けの賃金制度を検討している方は、下記の仕組みに沿った制度に今のうちからしておいた方が二度手間にならずに済むでしょう。いずれにしても評価制度は、短期間で作れるものではありません。実際の運用に耐えうる制度にするために、早めに動いた方が良いでしょう。無期転換への対応後には、賃金制度の構築が派遣会社には必須となっていくことは避けられないでしょう。