労使協定方式で派遣スタッフの給与を決める場合の協定フォーマット
労使協定フォーマットが公表されました!
2019年3月29日に、『労働者派遣法第 30 条の4第1項の規定に基づく労使協定(イメージ) 』が
厚生労働省HP内の、労働者派遣事業関係業務取扱要領・様式・各種報告書で公表されています。
派遣会社版の同一労働同一賃金で、派遣先会社で直接雇用されている従業員の給与水準に左右されない方式として、多くの派遣元会社が、この改正派遣法30条の4第1項に基づき、2020年4月1日より労使協定方式により派遣スタッフの賃金(時給)を決めていくと推測されますが、この労使協定方式を導入するうえで、名前のとおり労使協定が必要になります。
今回は、そのモデルイメージがアップされたわけで、必ずしもこのフォーマットに沿わないと法律に反するというわけではありませんが、厚生労働省の考え方を知る意味で興味深い内容となっています。
いわゆるテキストだけの労使協定ではなく、給与テーブルが記載されたものとなっています(もちろん、実務的には別紙でもOKなのでしょう)
実務的な視点で協定内容を読み取る
今回のイメージは、北海道でプログラマーを派遣する会社を想定して作られています。この労使協定方式で決定される給与水準は、①地域別×②職種別の組み合わせが基本となるためです。①②のデータは厚生労働省より公表されます。給与水準のベースは、賃金構造基本統計調査で公表されている数字となります。この場合は、労使協定にこの数字を採用した理由を記載する必要はありませんが、下記の方式を用いる場合は、理由付記を協定内に盛り込む必要があるようです。次の記載があります。
① 職種ごとに賃金構造基本統計調査と職業安定業務統計を使い分ける場合
② 職業安定業務統計を用いる場合であって、次のように職業分類を使い分ける場合
・ 「大分類」と「当該大分類内の中分類又は小分類」
・ 「中分類」と「当該中分類内の小分類」
③ 職業安定局長通知で示したデータ以外の他の公式統計又は独自統計を用いる場合
基本は、厚生労働省の統計を用いるべきですが、独自の統計を用いることも認めています。ここは運用上の含み(幅)を持たせていますが、合理的な理由は必要になるわけです。東京都の場合、中小企業の賃金・退職金事情 という独自の統計が公表されているので、そういった公的な別統計をベースにすることも想定しているのだと思われます。
賃金の額は統計をベースに決めることになりますが、当然、賃金決定に際しては派遣元会社は評価を行う必要があります。評価により賃金が決まる。つまり能力や勤続年数により賃金が上昇する仕組みを用意することになります。今回のイメージでは職務給(上級プログラマー・中級〃・初級〃のランク分け)をベースに、上級であれば勤続10年、中級であれば3年という標準モデルを打ち出し、それを示しています。
また、厚生労働省が統計を更新するごとに、別表1(同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金額と同額以上であることを確認した旨の書面を協定に添付することと記載されています。つまり、世間相場(平均的な賃金額)を常に派遣スタッフに示したうえで、自社の給与がそれを上回っているから安心して仕事してください、というニュアンスと考えると分かりやすいかもしれません。
ちなみに、今回の別表2に基本時給と賞与相当時給の金額が記載されていますが、A・B・C全てのランクで基本時給×20%が賞与相当時給となっています。つまり、一般の労働者(世間相場)は賞与で月給×12か月の20%である2.4か月分をもらうのが理想的だと厚生労働省は考えているのかな?と邪推しましたが、別表2の備考(実際の厚生労働省HPのファイルでご確認ください)に、下記の記載があります。
AランクとA評価は、違う意味だと考えられます。つまり、Aランクのなかで、更にA評価25%・B評価20%・C評価15%と、賞与相当額は変動させても良いというニュアンスです。派遣スタッフではない、いわゆる一般社員でも賞与は評価で決まるのが通常なので、半期ごとの評価もOKとしていることを考えると、通常の時給に賞与分を最初から上乗せしなくとも良いと考えられます。
つまり、支給日前に退職した派遣スタッフにまで賞与分を最初から上乗せしなくとも良いということでしょう。支給される前提があれば、賞与は後払いでも良い。
Bランク・Cランクの基本給が、一般の労働者の平均的な賃金の額より低いことからも、そのことが読み取れます。あくまで最終的な年収ベースで一般の労働者と同等以上にしなさいというイメージで考えれば良いでしょう。