派遣法改正により就業規則に盛り込むべき規定とは?
派遣法改正により、許可や許可更新の際に、就業規則の添付を義務付けられることになりました。今回は就業規則に盛り込むべき内容についてまとめてみました。
就業規則に盛り込むべき規定は?
①派遣労働者のキャリアの形成の支援に関する規定
具体的には、教育訓練の受講期間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことを就業規則に規定することが必要です。また、次の合理的な理由がある場合は、教材を無償で渡し、学習に必要とされる時間数に見合った手当を支払う必要があることから、就業規則に併せて規定しておくと良いでしょう。
(合理的な理由の例)
・派遣元事業所と派遣先の事業所との距離が非常に遠い(片道概ね4時間)場合
・集合研修をするための日程調整等が困難な場合
・eラーニングの施設を有していない場合
【就業規則規定例】
第○条 (キャリアアップに資する教育訓練)
1 会社は、すべての派遣従業員に対して、キャリアアップに資する知識を高め、技術の向上を図るため必要な教育を行う。
2 派遣従業員は、会社が行う教育の受講を命じられたときは、正当な理由なくこれを拒むことはできない。
3 この規定において「会社」とは、派遣元事業所のみならず派遣先事業所も含めるものとする。
4 キャリアアップに資する教育訓練は、原則として所定労働時間内に実施するものとする。訓練が所定労働時間外に及ぶときは、所定外労働として賃金を支給する。また、会社の休日に行われるときは、あらかじめ他の労働日と振り替える、若しくは休日労働として賃金を支給する。
5 派遣労働者が教育訓練を受講するためにかかる交通費については、派遣先との間の交通費より高くなる場合は、差額を支給する。
6 キャリアアップに資する教育訓練は、原則として会社の事業所内で行うこととするが、やむを得ない理由がある場合は、キャリアアップに資する自主教材の提供またはeラーニングの活用等により、教育訓練を行う場合がある。会社の事業所外で行う教育訓練については、当該教材の学習またはeラーニングに必要とされる時間数に見合った手当の支給を行うこととする。
7 キャリアアップに資する教育訓練において、次のいずれかに該当する者は、受講済みであるとして取扱うこととする。
① 過去に同内容の教育訓練を受けたことが確認できる者
② 当該業務に関する資格を有している等、明らかに十分な能力を有している者
②休業手当に関する規定
無期契約の方や有期契約期間の途中で派遣契約が終了した者について、次の派遣先を提供できない場合など、使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合は、労働基準法第 26 条に基づく手当を支払うことが必要です。休業手当の支払義務自体は以前と変わりませんが、就業規則に明記することが義務付けられることになりました。
【就業規則規定例】
第○条(休業手当)
1 会社の責めに帰すべき事由により、休業したときは、休業手当を支給する。休業手当の額は、1日につき平均賃金の6割とする。
2 前項の規定は、無期雇用派遣労働者又は有期雇用派遣労働者であるが労働契約期間内に労働者派遣契約が終了した派遣労働者について、次の派遣先を見つけられない等、会社の責めに帰すべき事由により休業させた場合も含むものとする。
就業規則に盛り込んではいけない規定とは?
派遣法は、次の事由に該当する場合の解雇を認めていません。就業規則にこのような規定がある場合は、改定が必要です。
①無期契約の派遣スタッフを派遣契約の終了のみを理由とする解雇
②有期契約の派遣スタッフを雇用期間の途中に派遣契約の終了のみを理由とする解雇
従業員が常時10人未満で就業規則届出義務の無い事業所は?
労働者派遣事業関係業務取扱要領によると、”当該取扱いの記載された就業規則(労働基準法第 89 条第1項第2号。以下同じ。)又は労働契約の該当箇所の写し等”とされています。
したがって、就業規則届出義務の無い派遣会社は、個別に締結する労働契約書に上記に注意した規定があれば、許可・更新の際の添付書類として認められます。
今回の改正で重要な部分は、やはりキャリアアップに資する教育訓練です。この教育は、Off-JT、OJT問いません。また、教育主体も派遣元・派遣先どちらでも構いません。ただし、派遣元会社として教育訓練計画を整備すること、教育訓練期間中もきちんと給与を支払うことが大きなポイントです。今回は派遣事業の許可申請または許可更新に重点を置いて書きましたが、来年6月に報告する「労働者派遣事業報告書」には①実施した教育訓練の内容、②実施人数、③平均実施時間、④訓練方法、⑤訓練実施主体、⑥従業員の訓練費負担の有無、⑦賃金支給の有無を報告する義務があります。そのためにも、早めに手を打って、教育訓練の仕組みづくりをしておかれることをお勧め致します。