派遣法改正により事業報告書が大幅に変更されました
平成27年9月30日施行の労働者派遣法改正に伴い、労働者派遣事業報告書の提出期限、報告内容が大幅に変更されました。それでは、早速変更点をみてみましょう。
労働者派遣事業報告書が1種類になり、報告も年1回になります
改正前)
労働者派遣事業報告書(6月1日現在の状況報告)・・・提出期限:6月30日
労働者派遣事業報告書(年度報告)・・・提出期限:毎事業年度経過後1ヶ月以内
改正後)
労働者派遣事業報告書(年度報告及び6月1日現在の状況報告)・・・提出期限:6月30日
※施行日(27年9月30日)前に平成27年度の事業年度が終了した事業主については、事業年度経過後
1ヶ月以 内に従来の様式で年度報告書を提出することになります。
ただし、「収支決算書」と「関係派遣先割合報告書」は、従来どおり毎事業年度経過後3ヶ月以内に提出が必要ですので、ご留意ください。
労働者派遣事業報告書の変更点
様式を新旧比較し、変更箇所、追加事項についてまとめました。
改正前)旧様式
改正後)新様式
●変更箇所
6欄 大企業、中小企業の別
7欄 産業分類 ※定款、登記簿等に記載されている「主たる事業」を記載
10欄 親会社の名称
11欄 請負事業の実施、構内請負の実施の有無
13欄 請負事業の売上高
このように、第1面だけでも報告事項が増加しています。特に、労働者派遣事業に該当するか否かの判断を的確に行う必要があることにかんがみ、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分を明らかにすることを目的として、請負事業の売上高等においても報告が義務付けられることになりました。
●変更箇所
(1)派遣労働者数等雇用実績(事業年度末日現在の実人数)
※従来は、日雇いか否か、常用労働者か否かにより項目が3つに区分されていただけですが、今後は派遣社員の雇用契約が有期か無期か、通算雇用期間が1年以上か否か、同じ職場に1年以上派遣見込みの有無別に人数をカウントすることになります。
(4)①教育訓練(安全衛生教育)の実績、②教育訓練(①及びキャリアアップ措置以外)の実績、③主な派遣先事業主(取引額上位5社)
(6)雇用安定措置の実績
第2面では、(1)の雇用実績表からわかるように、雇用形態別に、派遣先毎に管理できていないと記入できない内容になっています。特に、有期雇用の派遣スタッフの期間制限に意識して管理することを強く求められていることがわかります。
●変更箇所
第3面、第4面は、業務別派遣料金及び派遣労働者の賃金の平均値を記入します。
従来は、いわゆる政令26業務のみ業務別に派遣料金と賃金平均を記載していたのに対し、今後は、最新の日本標準職業分類(中分類)に基づく職種に基づき、該当する派遣スタッフの区分及び従事した業務の種類別に報告する必要があります。
注意)一覧の職種には、一部派遣禁止業務(建設従事者、電気工事従事者、医療従事者等)も含まれています。事業報告書に記載があるからといって派遣可能なわけではありませんので、ご留意ください。
●追加箇所
キャリアアップ措置の実績について記載します。
a 労働者派遣事業の許可または更新を行った年 労働局に提出した「教育訓練計画書」に基づいた教育訓練を実施することが求められます。計画書の訓練内容に基づき、実績を記載します。
b a以外の年 「教育訓練計画書」の提出義務はありませんが、教育訓練の実施義務はあります。したがって、27年9月30日以降新たに入社したスタッフや既存のスタッフに教育訓練を実施し、報告することになります。
教育訓練の実施要件
イ 派遣労働者全員を対象としたものであること(登録型の有期雇用や日雇派遣労働者を含む)
ロ 訓練時間は「有給」かつ「無償」で実施されるものであること
ハ キャリアアップに資する内容のものであること(OJTも可)
ニ 入社時の訓練が含まれたものであること(短期の雇用含む)
★派遣スタッフ一人当たり、少なくとも最初の3年間は毎年1回以上訓練機会の提供が必要です。
★1年以上の雇用見込みのある者でフルタイム勤務の者は毎年概ね8時間以上、短時間の者はフルタイム勤務の者の勤務時間に比した時間の訓練機会の提供が必要。1年以上の雇用の見込みがない者については、少なくとも入社時の訓練は実施しなければいけません。
ホ 無期雇用派遣スタッフについては、長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容であること
キャリアアップ措置(教育訓練の実施とキャリア・コンサルティングの配置)は、旧特定労働者派遣事業の会社も義務となっています。3年間の経過措置期間中だから対象外とはなりません。事業報告の際に、教育訓練等が実施されていない等の状況が確認された場合は、労働局による指導が行われることもあるため、注意が必要です。
●変更箇所
6月1日現在の状況報告も、年度報告と同様に業務別、雇用形態別に報告が必要となります。
このように、事業報告書だけでも大幅な改正となっていることがわかります。来年の6月に慌てることの無いよう、今の内から①教育訓練の実施、②キャリア・コンサルティングの配置、③有期雇用契約社員の労務管理について整備されることをお勧めいたします。