事業報告書に記載する教育訓練3種類
改正により、毎年6月に労働局に提出する労働者派遣事業報告書(年度報告)に3種類の教育訓練実施報告をすることになりました。今回は、教育訓練の種類と記入例についてご紹介します。
3種類の教育訓練とは?
教育訓練の種類は、下記3つです。
①労働安全衛生法第59条の規定に基づく安全衛生教育
②キャリアアップに資する教育訓練
③その他の教育訓練
それぞれの教育訓練の内容を見てみましょう。
①労働安全衛生法第59条の規定に基づく安全衛生教育
労働安全衛生法第59条に規定する安全衛生教育とは、入社時及び作業内容変更時の安全衛生教育のことをいいます。
① 機械等,原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取り扱い方法に関すること
② 安全装置,有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取り扱い方法に関すること
③ 作業手順に関すること
④ 作業開始時の点検に関すること
⑤ 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること
⑥ 整理,整頓及び清潔の保持に関すること
⑦ 事故時等における応急措置及び退避に関すること
⑧ その他当該業務に関する安全又は衛生のための必要な事項
ただし,製造業以外の非工業的な派遣先に派遣するスタッフについては,①から④までの事項は,省略することができ ます。また、派遣先の業務に関し上級の資格を有する派遣スタッフや派遣先の業務に関し職業訓練を受けた派遣スタッフは安全衛生教育を省略することができます。
詳細は、許可基準の1つである安全衛生教育の実施とは?をご覧下さい。
②キャリアアップに資する教育訓練
キャリアアップに資する教育訓練とは、次の要件を満たす教育訓練をいいます。
②雇用する全ての派遣スタッフを対象としたものであること。
③有給(労働時間として賃金支給)かつ無償(費用徴収しない)で行われるものであること。
④入社時の教育訓練が含まれていること。
⑤無期雇用の派遣スタッフの教育訓練は、長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容のものであること。
⑥実施時間数は、フルタイムかつ1年以上雇用見込みがある者は毎年8時間以上、短時間勤務者は、1日の労働時間分、1年以上雇用見込みが無い者は、少なくとも入社時の訓練を実施すること。
⑦派遣元管理台帳に①実施日、②実施時間数、③教育訓練内容を記載すること。
キャリアアップに資する教育訓練は、①許可申請をした年と②更新申請をした年は、労働局に提出した「教育訓練計画」に基づいて実施することが義務付けられています。その他の年は、訓練内容等を変更しても構いません。
また、教育訓練計画は、許可申請時と更新申請時以外は、労働局へ提出する必要はありません。
③その他の教育訓練
上記①、②以外の一般教養としての教育訓練をいいます。
具体例としては、コンプライアンス研修、マイナンバー教育研修、インサイダー取引規制研修など、働くにあたって必要な研修ではあるが、キャリアアップに資する教育訓練に該当しない訓練です。
また、派遣スタッフが希望した任意の教育訓練もここに該当します。強制ではなく任意であるため、「有給かつ無償」でなくてもOKです。
事業報告書の記入例
それでは、事業報告書の記入例を見ていきましょう。
①労働安全衛生法第59条の規定に基づく安全衛生教育
上記の番号は、労働安全衛生規則 (雇入れ時等の教育) 第三十五条の番号を記入します。(具体的な番号と項目は、上記(※)を参照下さい。)
そして、各項目の訓練毎に実績を記入します。
②キャリアアップに資する教育訓練
ここで注意しなければならないのは、「訓練費負担の別」「賃金支給の別」です。
キャリアアップに資する教育訓練は、「有給かつ無償」の要件があります。そのため、キャリアアップに資する教育訓練を実施しても、教育訓練時間を無給にしたり、訓練費用(テキスト代や材料費等の実費負担含む)を徴収していると、この欄に記載することができません。③その他の教育訓練に記載することになります。
③その他の教育訓練
その他の教育訓練には、「無給(労働時間扱いしない)かつ有償(費用徴収あり)」の教育訓練を記載してもOKです。反対に、実施義務は無いので記載していなくても問題ありません。
以上のように、決算対象期間中に実施した各教育訓練の実施結果を報告しなければなりません。
そのためには、派遣元管理台帳に訓練実施の都度記載しておくと良いでしょう(但し、キャリアアップに資する教育訓練以外は記載義務はありません。)。
また、事業報告の際に、①の安全衛生教育と②のキャリアアップに資する教育訓練の実施が皆無であると、労働局の指導の対象になりますし、更新の許可がおりない可能性があります。教育訓練を実施していない事業者は、直ちに訓練計画を立て、実施するようにしましょう。