税務調査と労働基準監督署調査との違い
税務調査と労働基準監督署の調査(以下 監督署調査)は、全く異なる。
弊社ザイムパートナーズでは、税理士部門と社会保険労務士部門が連携しているため、この2つの調査の違いについて、社内で話すことがあります。今回は、その違いをまとめておこうと思います。監督署調査については、実際にお金を払うことになる『未払残業代』が大きな問題です。36協定等の書類提出がされてないことは、もちろん問題ではありますが、現実に多額の負担を強いられるという点では、未払残業代が大きいです(他には健康診断も資金負担がありますが、残業代のような多額にはなりません)
1.調査の遡及年度
税務調査・・・5年(悪質な場合は7年。繰越欠損金があった期間については10年)
監督署調査・・2年のみ
もっとも、実際の現場では税務署も監督署も最大限、過去の分について遡及するわけではありません。現実には税務調査では3年程度。監督署調査でも定期的な調査(定期監督といいます)であれば半年から1年程度で終えるケースが大半です。監督署調査では従業員からの申出による調査の場合は、きっちり2年遡及することになりますが、そうでない定期的な調査では柔軟な対応が取られているようです。役所も鬼ではないですね。
2.調査日数
税務調査・・・2日~5日程度
監督署調査・・2時間~1日程度
もちろん、企業規模によって異なりますが、100名規模の会社であっても監督署調査では2時間程度ということも珍しくはありません。税務調査は、規模の大小に拠らず、最低でも2日は覚悟する必要はありますが、監督署調査は短時間で済みます。これは逆にいえば、『短時間で違反をしているかどうかが分かってしまう』ということです。
3.調査のスタイル
税務調査では、下記の流れで進むことが一般的です。
①売上の漏れがないか確認
②在庫の漏れがないか確認(過大仕入の検証)
③人件費の確認(特に架空社員がいないか)
④一般経費の確認(私的な経費や、経費に出来ない支出がないか)
⑤源泉所得税や契約書への印紙税の納付漏れがないか
⑥優遇税制等の特例をつかっている場合には、その根拠資料
そして、上記の取引を1個1個調べていく作業になります。当然、時間もかかります。ところが監督署調査では、一人の社員のタイムカードと給与明細を見れば、残業代が払われているかどうかが直ぐに見破られます。早ければ5分で看破されます。そして言い逃れが全くできません。見解の相違と言う話は、監督署調査ではありません。
一人残業代が漏れていれば、給与計算方式は全社員ほとんど同じですから、あとは芋づる式に全体の未払残業代が推計できてしまいます。ここが、社員の多い会社では恐ろしい論点になります。
また、私見ではありますが、監督署調査は、未払残業代を監督署がもらうわけではありません。あくまで従業員に個別に支給することになります。そのせいか、比較的ドライに事務的に処理される傾向があります。監督署が得するわけではないからです。企業としては、残業代の認識をキチンとしておくことが必要です。早期の事前対策なしでは監督署調査は乗り切れません。
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