もめないための、定額残業代設定のポイント
定額の残業代制度
営業マンに対する「営業手当」等、定額の残業代を設定する事自体は問題ありません。ですが設定方法は何でも良いわけではなく、必ず押さえるべき4つのポイントがあります。
① 定額残業代が、何時間分の残業手当に相当するのかが、明確なこと
② ①の時間で、適正に計算した残業手当の定額残業代であること
③ 雇用契約書上で、①②の内容が把握できること
④ 設定した残業時間を超えたら、超えた分の残業手当を支払うこと
特に重要なのは④です。
例 30時間分の残業手当として、45,000円の定額残業代を設定し、実際には40時間残業
した場合(残業時間単価 1,500円)
→ 1,500 × (40 - 30)
= 15,000円の残業手当を、追加で支払う必要があります
つまり、定額の残業代を設定しても、④を把握するため、時間管理は必要です。同様に、いわゆる「年俸制」も同じ理屈で、時間管理は必要です。「時間管理不要の固定給制度は存在しない」と思って頂いて問題ありません。厳しい言い方で恐縮ですが、追加の残業代を支払わないようにするためには、設定した残業時間を超えないよう、業務内容を管理する以外に方法がありません。
タイムカード改ざんのリスクは、思っている以上に大きい
そうは言っても現実問題、残業が発生してしまう。業務の見直しも簡単にはできない。その際に残業代を押さえるため、タイムカード上の出退勤時間を意図的に改ざんして、給与計算をする。これは最もやってはいけないことです。会社が、意図的に労働時間をカットしていることが、書面で明白になってしまうためです。タイムカードと賃金台帳を照合すれば、一目瞭然です。
タイムカードの改ざんもそうですが、残業手当の未払は、最悪、経営者が逮捕されます。実際、平成15年に、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人の理事長が、タイムカード改ざんの証拠を元に、労働基準法違反で逮捕されています。
契約書等の私文書の効力は、万能ではありません
「残業代は支払いません」という雇用契約書は、従業員の同意があれば有効なのでしょうか?答えは「無効」です。仮に同意があったとしても、労働基準法を下回る条件を定めた契約は、無効です。「欠勤1日につき、1万円の罰金を支払います」というような誓約書も同様です。要は「本人の同意(署名・押印)があれば、どんな条件でもOK」では無いのです。
また、そのような労働基準法を下回る条件を定めた書面を、従業員に提示すること自体が、大きな リスクです。前述のとおり、第三者への立証は書面でなされ、会社にとって法的に不利な書面が第三者に渡った場合、会社としては抗弁ができなくなるためです。
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