労働基準監督署調査と年金事務所調査の視点は違います
同じ厚生労働省管轄の役所だが、調査の視点は違う
労働基準監督署と年金事務所は、共に「労働」を視点とした役所ではありますが、ポイントとなる視点は異なります。労働基準監督署は、「適正な賃金が払われているかどうか」年金事務所は、「被保険者に該当するか」です。
監督署は「正社員を」年金事務所は「アルバイト・パートを」チェックする傾向があります
2つの役所の調査を体験すると分かるのですが、労働基準法は、根本に労働時間に見合った賃金を支給しているかという視点で調査(正確には監督)をします。未払残業代という言葉にあるように、残業=法定超過時間に着目します。故に時給×時間 で計算されるアルバイト・パートは通常一日あたりの労働時間も8時間以下が多いため、チェックの対象としては優先度が低くなります。
一方で、年金事務所は、社会保険に適正に加入しているかという視点で調査します。通常、正社員(月給者)は社会保険に加入しているので、チェックされるのは、アルバイト・パートが中心になります。ご周知のとおりアルバイト・パートであっても正社員の労働時間の4分の3以上の者は社会保険加入の対象となるため、正社員に近い労働時間で働くアルバイト・パート(事実上、準社員と言えるほど勤務している者)をチェックしていく傾向があります。
共通点は遡及期間
2つの役所に共通するのは、遡及期間です。どちらも2年前まで遡ることができます。ただし、実務の現場では遡及期間は弾力的です。従業員(退職者含む)の訴えがあれば2年間遡及しますが、そうでない場合は、6ケ月程度。社会保険加入については、調査後に直ちに加入すればOKということも実務の現場ではあります。会計検査院が絡む場合は文字通り2年間遡及ということが通例ですが、そうでない場合は実務の現場は、法令違反の会社であっても配慮はしています。役所としても法令を守る会社を作ることが第一義であり、罰することを優先しているわけではないと社会保険労務士としては感じます。
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