協定対象労働者の賞与・手当で、前年平均額を使用する場合
賞与・手当は直近の平均額で労使協定に記載できる
労使協定方式を採用する派遣会社(別途退職金制度を設ける場合)、派遣スタッフに毎月支給する賃金は時給換算したもので、(基本給+賞与+手当)> 一般基本給・賞与等の額 となることが求められます。
一般基本給・賞与等の額は、具体的には局長通知の額(局長通達別添1、局長通達別添2)×地域指数 で計算した金額となります。この金額以上の賃金を派遣スタッフに支払うことが求められます。
派遣スタッフ個々人に実際に支払う賃金額が、一般基本給・賞与等の額(局長通知の額×地域指数)以上であればOK。これが原則となります。シンプルで運用上も分かりやすい方式です。もともと賞与や手当を派遣スタッフに一切支給していない会社については、この原則どおりの運用となることが多いでしょう。
ただし、前回の記事でもアップしたとおり、賞与と手当については、実際に支払う賃金額ではなく『直近の事業年度において協定対象派遣労働者に支給された額の平均額』とすることもできます。賞与や手当を派遣スタッフに支給する会社は、こちらを使うケースも出てくるでしょう。
基本給+直近事業年度平均での賞与・手当の額≧一般基本給・賞与の額 となっていれば問題ない。つまり、個々のスタッフにおいては局長通知の額を結果的に下回っている者がいても、会社全体での前事業年度平均額が一般基本給・賞与等の額以上であればOKという考え方です。
手当・賞与の違いがでるケースを、検証してみましょう。
具体的な例で解説してみましょう。通勤手当は実費支給。退職金制度は別途設けられており、賃金に通勤手当・退職金相当額は含まないという前提です。
労使協定に記載される比較対象賃金が、一般労働者の賃金以上となっている(1,250円≧1,236円)ので、協定締結内容に問題はありません。黄色い部分は、直近の事業年度において協定対象労働者に実際に支給された額の平均額となります。協定締結時点でこの平均額の計算が正しければ、実際の個々の派遣スタッフへの2020年4月以後に支払う賃金で、個別に見ると手当・賞与が低いことで、一般労働者の賃金1,236円を下回る人が結果的に出ても問題はありません。
実際に支給した額を下記としましょう。
各自Cランクに該当し、基本給は同じです。しかし、手当と賞与の額が異なり、比較対象賃金が1,236円を下回るケースが生じています。各自で異なる理由は下記です。
・鈴木さんは扶養家族が多いため、手当額が平均より多い。
・佐藤さんは、入社数カ月のため賞与の支給額が少ない(支給対象期間内の在籍が少ない)
・かつ、会社の業績が昨年よりダウンしたため、実際の賞与が低かった。
これらの明確な理由があれば、結果的に一般労働者の賃金を下回る人がいても運用上の問題はありません。ただし、賞与が低くなったことで2年目は平均額が少なくなり、一般労働者賃金を下回る場合は当然問題となるので、そのようなケースでは、通常は2年目に基本給自体を上げることになります。エンジニア等の正社員雇用で各種手当・賞与ありの派遣会社においては、このような運用となると推測されます。登録型派遣のスタイルと正社員派遣のスタイルの会社とで労使協定方式の記載の仕方に違いが出ることはやむをえないことかもしれません。