派遣会社にも雇用調整助成金は使えます(コロナウイルス対応版)
雇用調整助成金で派遣スタッフの休業に対応する
新型コロナウイルス感染症への対応として、特別措置として要件が緩和された雇用調整助成金ですが、助成対象となる会社の範囲が2020年2月28日より、次のとおり大幅に緩和されています。中小企業においては、前年同月と比較して売上高が10%以上ダウンした会社が従業員を休業させる場合に、従業員の休業期間中の賃金相当額の3分の2が助成されます。
●2月27日までの対象会社
日本・中国間の人の往来の急減により影響を受ける事業主であって、中国(人)関係の売上高や客数、件数が全売上高等の一定割合(10%)以上である事業主
●2月28日以後の対象会社
新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主
→つまり、中国関係の事業をする会社だけではなく、日本人観光客の減少の影響を受ける観光関連産業や、部品の調達・供給等の停滞の影響を受ける製造業なども幅広く特例措置の対象となると、厚生労働省は解説しています。
(参考)新型コロナウイルス感染症の影響に伴う雇用調整助成金の特例措置の対象事業主の範囲の拡大について
これは、従業員自体が感染したことを言っているのではなく、コロナウイルスによる景気の後退・経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整(自宅待機や教育訓練)を行わざるを得ない会社ということで、派遣先から突然の休業を要請される派遣元会社も対象となると考えられます。実際、過去の震災時に休業を余儀なくされた派遣会社が、雇用調整助成金の対象とされています。
(参考)震災による影響を受けた派遣元事業主の方々へ~派遣労働者の雇用の維持に雇用調整助成金を活用してください
雇用調整助成金の注意点
ただし、助成金はすぐに支給されるものではありません。【計画申請→実際の休業や教育訓練の実施→支給申請→受給】 というタイムスケジュールになります。つまり、派遣先から休業の要請を受けた後に別の派遣先が見つからず、派遣スタッフに自宅待機を命じるのであれば、助成金を支給される前に派遣スタッフに労働基準法で定める休業手当は当然支給しなくてはいけません。
この間の資金繰りについては、自己資金または融資で賄う必要があります。融資については、各種セーフティネット融資も今回のコロナウイルスによる事業縮小に対して手当されています。(信用保証協会による保証率100%の融資が用意されています。)
(参考)新型コロナウイルス感染症に係る中小企業者対策を講じます(セーフティネット保証4号の指定)
また、休業ではなく教育訓練を行う場合でも、派遣法に定めるキャリアップに資する教育訓練は対象となりません。これは、法で定められた教育訓練について雇用調整助成金の対象としないと規定されているからです。
実務的には必要になってくる(もしくは、あった方が審査が早い)と思われるのですが、例えば製造業派遣の場合、派遣先が新型コロナウイルスの影響により、部品の調達・供給等をストップするという旨の何らかの通知書(要請書)はあった方が望ましいと思います。要は、派遣先からのコロナウイルスを起因とする休業要請に応じざるを得なかったという事実を示す書類はあった方が審査上悩まずに済むだろう、ということです。このあたりは実務的にどう手当てされるかは、現時点(2020年3月2日)ではっきりしませんが、早く支給されるために派遣先にも書面での通知を必ずお願いするというのは実務的に必要だと考えています。
ちなみに、本来は休業の計画の申請が第一前提の助成金ではあるのですが、今回の特例として2020年1月24日以降に初回の休業等がある計画届については、2020年5月31日までに提出すれば、休業等の前に提出されたものとみなされます。計画が事後で構わないという助成金というのは非常に珍しく、緊急性の高さを改めて実感させます。
なお、事後で構わないのは初回のみです。2回目以後は休業前に計画を届でる必要があります。
雇用期間が6ヶ月以内の者も対象となる
同一事業主に、引き続き雇用保険被保険者として雇用された期間が6か月以上の者の休業等が支給対象です。有期雇用・無期雇用の違いによる制限はありませんが、休業前の雇用期間が6カ月未満の者は助成金の対象とならない・・・とされていたのですが、対象となることに改正されました。
労使間の協定により休業等をおこなうこと。
改正派遣法の労使協定方式における賃金決定と同様に、この助成金については休業についての労使協定書の提出が別途求められます。従業員の過半数代表者の自署であることや、事後の労働局による直接ヒアリングも行われることがあります。過去の雇用調整助成金での不正受給が多発したため、このあたりは厳格です(当然といえば、当然ですが)。労使間の協定により休業等を決めたという、本当にやむを得ない状況であるのだから助成するという趣旨なのでしょう。