最低賃金の変更に伴う派遣会社の対応について
令和2年10月1日以後の最低賃金
最低賃金の引き上げが決定されました。具体的には次のとおりです。増加賃金の高い順に表示しております。北海道・東京・静岡・京都・大阪・広島・山口の7都道府県は改定されてないため、影響は受けません。他の都道府県では最大3円の最低賃金の改定となります。都道府県ごとに賃金改定を行う日付け(効力発生年月日)が異なるので気をつけましょう。
都道府県名 | 新最低賃金 | 旧最低賃金 | 増加賃金(時給) | 効力発生年月日 |
青 森 | 793円 | 790円 | 3円 | 令和2年10月3日 |
岩 手 | 793 | 790 | 3 | 令和2年10月3日 |
山 形 | 793 | 790 | 3 | 令和2年10月3日 |
徳 島 | 796 | 793 | 3 | 令和2年10月4日 |
愛 媛 | 793 | 790 | 3 | 令和2年10月3日 |
長 崎 | 793 | 790 | 3 | 令和2年10月3日 |
熊 本 | 793 | 790 | 3 | 令和2年10月1日 |
宮 崎 | 793 | 790 | 3 | 令和2年10月3日 |
鹿児島 | 793 | 790 | 3 | 令和2年10月3日 |
秋 田 | 792 | 790 | 2 | 令和2年10月1日 |
福 島 | 800 | 798 | 2 | 令和2年10月2日 |
茨 城 | 851 | 849 | 2 | 令和2年10月1日 |
群 馬 | 837 | 835 | 2 | 令和2年10月3日 |
埼 玉 | 928 | 926 | 2 | 令和2年10月1日 |
千 葉 | 925 | 923 | 2 | 令和2年10月1日 |
滋 賀 | 868 | 866 | 2 | 令和2年10月1日 |
鳥 取 | 792 | 790 | 2 | 令和2年10月2日 |
島 根 | 792 | 790 | 2 | 令和2年10月1日 |
香 川 | 820 | 818 | 2 | 令和2年10月1日 |
高 知 | 792 | 790 | 2 | 令和2年10月3日 |
佐 賀 | 792 | 790 | 2 | 令和2年10月2日 |
大 分 | 792 | 790 | 2 | 令和2年10月1日 |
沖 縄 | 792 | 790 | 2 | 令和2年10月3日 |
宮 城 | 825 | 824 | 1 | 令和2年10月1日 |
栃 木 | 854 | 853 | 1 | 令和2年10月1日 |
神奈川 | 1,012 | 1,011 | 1 | 令和2年10月1日 |
新 潟 | 831 | 830 | 1 | 令和2年10月1日 |
富 山 | 849 | 848 | 1 | 令和2年10月1日 |
石 川 | 833 | 832 | 1 | 令和2年10月7日 |
福 井 | 830 | 829 | 1 | 令和2年10月2日 |
山 梨 | 838 | 837 | 1 | 令和2年10月9日 |
長 野 | 849 | 848 | 1 | 令和2年10月1日 |
岐 阜 | 852 | 851 | 1 | 令和2年10月1日 |
愛 知 | 927 | 926 | 1 | 令和2年10月1日 |
三 重 | 874 | 873 | 1 | 令和2年10月1日 |
兵 庫 | 900 | 899 | 1 | 令和2年10月1日 |
奈 良 | 838 | 837 | 1 | 令和2年10月1日 |
和歌山 | 831 | 830 | 1 | 令和2年10月1日 |
岡 山 | 834 | 833 | 1 | 令和2年10月3日 |
福 岡 | 842 | 841 | 1 | 令和2年10月1日 |
北海道 | 861 | 861 | 0 | 令和元年10月3日 |
東 京 | 1,013 | 1,013 | 0 | 令和元年10月1日 |
静 岡 | 885 | 885 | 0 | 令和元年10月4日 |
京 都 | 909 | 909 | 0 | 令和元年10月1日 |
大 阪 | 964 | 964 | 0 | 令和元年10月1日 |
広 島 | 871 | 871 | 0 | 令和元年10月1日 |
山 口 | 829 | 829 | 0 | 令和元年10月5日 |
派遣先均等・均衡方式を採用しているときの注意点
この最低賃金の引上げに連動して、派遣スタッフの賃金も最低賃金を下回ることになる水準となっていれば、当然に時給を引き上げることになります。派遣先均等・均衡方式により派遣スタッフの賃金を決定している派遣会社では、派遣先での比較対象労働者が最低賃金で勤務していていることから、同額の賃金を支給しているようなケースですと賃金の引上げは必須です。
もちろん、派遣先は比較対象労働者の賃金が変更された場合には、派遣法26条第7項の規定により遅滞なく、派遣元事業主に対し、変更の情報提供をしなければなりません。 派遣元に通知する義務があります。最低賃金の変更による改定であっても、派遣元に情報提供をすることは必須となります。
労使協定方式を採用しているときの注意点
多くの派遣会社では、労使協定方式により派遣スタッフの賃金を決定しています。派遣時給は都市圏を中心に高い水準にあるため、影響を受ける業種は限定されているとは思いますが、2019年に公表されている「労使協定方式に関するQ&A 」にも次の記載があるため、最低賃金スレスレの派遣時給となっている会社は、最低賃金の発効日以後の時給について、問題がない水準になっているか検討が必要なケースもでてくるでしょう。
一般基本給・賞与等の額が最低賃金を上回っているかの判断において、この最低賃金とは、「①実際に賃金が支払われる時点のもの」、「②労使協定が締結される時点のもの」、「③局長通達で公表されている賃金構造基本統計調査や職業安定業務統計の年度のもの」のいずれであるか。答; ①の時点の最低賃金を上回っているかを確認しなければならない。
派遣スタッフに実際に支払う、一般基本給(時給換算したもの)は、局長通達により示された賃金×能力経験調整指数×地域指数で計算した額(一般賃金)を下回ることはできません。そしていわゆる未経験スタッフ(基準値0年)の一般賃金は最低賃金を下回ることはできません。
そのため、基準値(0年)に地域指数を乗じた後の時給が、最低賃金と同額となっているケースでは、最低賃金が上昇すれば当然に以後の「1年」経過以降の一般賃金も変更になります(上昇します)。先ずは基準値(0年)の時給が最低賃金となっていないかを確認しましょう。
労使協定の有効期間(協定内に定められています)内に、一般賃金の額が変更された場合には、有効期間中であっても、労使協定に定める派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の額であるか否かを確認し、派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の額でない場合には、労使協定に定める賃金の決定方法を変更するために労使協定を締結し直す必要があります。一方、派遣労働者の賃金額が一般賃金の額以上である場合には、派遣元事業主は、同等以上の額であることを確認した旨の書面を労使協定に添付する必要があります。(令和2年6月 労働者派遣事業関係業務取扱要領 181ページに詳細が記載されています。)
つまり、労使協定の有効期間内であっても、最低賃金の上昇により、労使協定に記載されている一般賃金(派遣スタッフに実際に払う額と比較する時給。能力・経験調整指数と地域指数を乗じた後)< 改定後の最低賃金 となってしまった場合は、労使協定の内容を変更する必要があり、当然に選任された過半数代表者の確認が必要になります。
そして、派遣スタッフに支払っている時給 > 改定後の最低賃金 となっていて問題がない場合でも、派遣会社は「問題がない」ことを確認した書面を労使協定と一緒に保存する必要があります。基準値の数字が変わる場合は書面を作成する必要がありますし、今後の労働局の調査でも指導を受けることも出てくると思われます。