令和2年12月4日労使協定のイメージが公開されています
労使協定イメージはどうなっている?
厚生労働省HPにおいて、令和2年12月4日付で、下記3点の掲載が公表されています。
派遣会社の実務担当者として気になるのは、令和3年4月1日以後に効力を持つ、③の労使協定のイメージです。協定の模範サンプルの開示になるわけですが、17ページ以後の【通達の第1の5「現下の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う労働市場への影響等を踏まえた取扱い」の記載例】が参考になります。
令和3年度の一般賃金(労使協定方式における、「基本給・賞与・手当等」、「通勤手当」、「退職金」)は、令和2年10月20日職発 1020 第 3 号により、同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和3年度適用) を用いて賃金を決定するのが原則ですが、職種・地域ごとにコロナウイルスによる事業活動の縮小傾向が確認できる場合に限り、令和元年7月8日職発 0708 第2号における一般賃金の額(令和2年度適用)を用いても良い特例が設けられたわけですが、どのように協定に盛り込むべきなのか悩まれている方も多いと思います。それに対して模範サンプルが示されたことになります。
シンプルに解釈すれば、派遣契約数等の指標にダウントレンドが継続して確認でき、当面回復が見込めないという職種または地域の派遣スタッフに限定した特例として、現行の令和2年度の賃金水準のままで据え置いて良いのですが、労使協定記載におけるポイントは、令和3年度適用の賃金額を適用する職種・地域を記載した賃金表と、特例を使う職種・地域について令和2年度適用の賃金表を区分して、明確に表示することが望ましいということです。
具体的な賃金表のイメージ
サンプルは、賃金構造基本統計調査(局長通達別添1と呼ばれます)を使用する派遣会社を例に記載しています。サンプルは具体的な職種や金額が入ってないので分かりにくいので、職種・地域指数を反映させたものを下記に用意しました。
先ず、令和3年度適用での賃金額を原則どおり適用する職種と適用地域での賃金を表示します。当然、地域の記載と、地域指数を乗じた後の金額を示します。今回は比較しやすくするため、特例を使う職種・地域(仮に愛知県とします)も原則での賃金表も併記していますが、特例を使う地域・職種については、特例の額のみの賃金表を示すでも良いでしょう。ただし、後述しますが、地域といつの統計年度を使っているかを賃金表に明示することは必須と考えて良いでしょう。
基準値及び基準値に能力・経験調整指数を乗じた値 | |||||||||
0年 | 1年 | 2年 | 3年 | 5年 | 10年 | 20年 | |||
1 | 206 システム・エンジニア(職種) | 賃金構造基本統計調査 (令和元年) |
1,526 | 1,782 | 1,914 | 1,976 | 2,088 | 2,402 | 3,003 |
2 | 地域調整 | (地域名) | 1,606 | 1,875 | 2,014 | 2,079 | 2,197 | 2,527 | 3,160 |
愛知 | |||||||||
(令和元年度) |
基準値及び基準値に能力・経験調整指数を乗じた値 | |||||||||
0年 | 1年 | 2年 | 3年 | 5年 | 10年 | 20年 | |||
1 | 206 システム・エンジニア(職種) | 賃金構造基本統計調査 (令和元年) |
1,526 | 1,782 | 1,914 | 1,976 | 2,088 | 2,402 | 3,003 |
2 | 地域調整 | (地域名) | 1,526 | 1,782 | 1,914 | 1,976 | 2,088 | 2,402 | 3,003 |
岐阜 | |||||||||
(令和元年度) |
地域調整の額ですが、愛知県は地域指数105.2%、岐阜県は100.0%を乗じた金額を記載しています。ややこしいのですが、令和3年度適用の賃金構造基本統計は、令和元年度の統計(2年前の統計)を用いているためです。どの年の統計を使用しているかも示します。つまり、地域と統計年度を示すことで、特例を使っているかどうかを容易に判断できるようにしています。この派遣会社では岐阜県の影響は軽微でコロナ前と比べて影響を受けていないが、愛知県においては影響を受けているとします。
基準値及び基準値に能力・経験調整指数を乗じた値 | |||||||||
0年 | 1年 | 2年 | 3年 | 5年 | 10年 | 20年 | |||
1 | 206 システム・エンジニア(職種) | 賃金構造基本統計調査 (平成30年) |
1,427 | 1,655 | 1,811 | 1,882 | 1,981 | 2,333 | 2,911 |
2 | 地域調整 | (地域名) | 1,505 | 1,745 | 1,909 | 1,984 | 2,088 | 2,459 | 3,069 |
愛知 | |||||||||
(平成30年度) |
一般基本給・賞与等の額を明らかに(派遣スタッフに分かりやすく)することが必要なため、どの地域指数を用いるかを明確にすることが必要ということが、サンプルには記載されています。さらに時給に通勤手当を含めて支給する派遣会社(令和2年度適用で時給72円。3年度で74円)の場合は、上記の地域調整の金額に上乗せされる通勤手当分の時給は、地域調整額とは「別に」記載することも求めています。イメージとしては下記となるでしょう。3が追記箇所です。
基準値及び基準値に能力・経験調整指数を乗じた値 | |||||||||
0年 | 1年 | 2年 | 3年 | 5年 | 10年 | 20年 | |||
1 | 206 システム・エンジニア(職種) | 賃金構造基本統計調査 (平成30年) |
1,427 | 1,655 | 1,811 | 1,882 | 1,981 | 2,333 | 2,911 |
2 | 地域調整 | (地域名) | 1,505 | 1,745 | 1,909 | 1,984 | 2,088 | 2,459 | 3,069 |
愛知 | |||||||||
(平成30年度) | |||||||||
3 | 2に別途加算される一般通期手当 | 72 | 72 | 72 | 72 | 72 | 72 | 72 |
職業安定業務統計を使用する会社の方が多いと思いますが、その場合でも統計年度の記載は求められることになります。賃金構造基本統計調査と異なり、明確な平成●年といった表記は職業安定業務統計にはありませんが、同じ年での記載でも実務上の支障はないと思われます。気にされる方は、「令和元年7月8日職発 0708 第2号における一般賃金の額(局長通達別添2)」であることを表の注記として記載しておくと良いでしょう。
また、同一労働・同一賃金を意識した記載として、派遣職種が同じであっても、雇用形態が違うことで時給に差が生じている場合は、不合理な待遇差が生じているため望ましくない(留意するべき)と釘がさされています。同じ職種の仕事なのに、正社員派遣(無期雇用)と、有期雇用での派遣で、賃金が異なる場合は待遇差の根拠の説明が必要ということになります。
事業活動のダウントレンドの示し方
サンプルでは、派遣契約数を事業活動の指標として提示しています。もちろん、事業活動の増減を示せる指標であれば、契約数にこだわる必要はありません。
愛知県(地域)での「システムエンジニア(職種名)」の労働者派遣契約数の動向
令和2年2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | |
労働者派遣契約数 | ||||||||||
対前月比 | ||||||||||
対前年
同月比 |
||||||||||
新規労働者派遣契約数 | ||||||||||
対前月比 | ||||||||||
対前年
同月比 |
・ 「労働者派遣契約数が、令和2年1月 24 日以降、継続的に減少していること」
・ 「労働者派遣契約数が、対前年同月比で継続的に減少していること」
・ 「新規の労働者派遣契約数が、対前年同月比で継続的に減少していること」
などを数字で示すことが例示として挙げられています。もちろん、実際に検証できる根拠書類(個別契約書など)が提示できることも必要です。なお、根拠書類は、令和3年6月の事業報告書に添付することが求められています。