2020年4月より、派遣スタッフの賃金はこうやって決まる?
同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準及びそれと比較する派遣労働者の賃金(案)
2018年11月16日に開催された、第14回労働政策審議会 職業安定分科会 雇用・環境均等分科会 同一労働同一賃金部会で公表されている、『同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準及びそれと比較する派遣労働者の賃金(案)』が、かなり具体的な数値で発表されています。
2020年4月以後、派遣スタッフに支払う給与の水準がどうなるかが掴めます。過去の記事でもお伝えしましたとおり、多くの派遣会社が採用すると推測される『労使協定方式による賃金決定』において事実上の派遣スタッフ最低賃金(厚生労働省から公表される)がどのように計算されるかを今回の審議会は示しています。
理解しておきたい計算ポイントとして、次の4つがあります。
(1)賃金決定の基準となる統計資料は、a.賃金構造基本統計調査と、b.職業安定業務統計を用い、職種別平均賃金を時給換算したものがベースとなる。
(2)なお、職種別平均賃金は、賞与も含めた年収を時給換算したものになる。イメージとしては<(所定内給与×12ヶ月+特別給与(賞与)>÷52週÷40時間 で計算したものが公表される。
(3)さらに、経験に応じて賃金は上昇するものとして能力・経験調整指数を乗ずる。つまり、派遣先での派遣年数に応じて時給は上昇する。
(4)更に、都市部と地方では賃金の乖離があるので、地域指数をさらに乗ずる。(全国平均を100とした場合、愛知県では指数は105.5%を乗ずることになります。)
厚生労働省より毎年公表されるであろう、賞与も含めた年収÷所定労働時間で計算した時給以上の額を派遣会社が払うのであればOKということになります。月給とは別に賞与も支給している派遣会社であれば、その合算額を所定労働時間で除して計算した時給で判定するため、単純に月給÷所定労働時間で算出した時給で比較するわけではありません。イメージ図は下記となります。
派遣スタッフに退職金まで準備しないといけない?
今回の案では、派遣スタッフの退職金にまで踏み込んで記載されています。そこまで負担させるのか!という感じですが、もちろん、まだ未決定です。この場合、A.前述した賞与水準も加味した時給が更に上乗せされるケースが想定されます(案では6%の退職金見合い分の時給アップ例が記載されています)。
または、B.中小企業退職金制度に加入させる。OR C.派遣会社も退職金制度(月給×勤続年数に応じた支給倍率で計算等)を設けるという、3つの案が出されています。
問題は、このような明らかな人件費増加を派遣先に転嫁(請求)できるか、ということになります。これは、ここまで派遣単価が上昇するなら自社で正規雇用するという流れに進むか、それでも景気変動リスクを避けるために一定割合は非正規雇用でカバーするという流れが継続する、という世の中の流れは判断しかねますが、実際に厚生労働省より公表されることになる時給がいくらなのか、という金額次第ではあります。
退職金制度がない会社も多いなかで、派遣会社にのみ強制的に退職金負担を強いるというのは厳しいものがあります。場合によっては、実際の派遣先の直雇用フルタイム無期雇用者よりも派遣スタッフの方が時給が高いというケースも起こりえます。(その際は労使協定方式に拠らずに、原則の均等・均衡方式にて派遣スタッフの給与を決めることも一つです。派遣先に退職金制度がなければ、派遣元も退職金見合いを含んだ賃金を払う必要はなくなります)
労使協定方式にすると、派遣先正社員よりも金額が高くなることも起こりえるわけで、派遣会社は審議会の動向に注目していく必要があります。今後もこのコンテンツで継続してお伝えしていきます。