純資産を減らさない節税 その3 ~役員借入金を、資本金に振替えて純資産アップ(借入金の現物出資)~
役員借入金を、資本金に振替えて純資産アップ(借入金の現物出資)
※但し税務リスクに注意
純資産を増やす上で、増資は一番シンプルな方法です。増資する資金がないときでも、貸借対照表に役員からの借入金(役員→会社への貸付)があるときは、これを資本金に振替えることで、純資産を増やすことができます。借入金の現物出資と呼ばれる手法で、増資の際によく見受けられますが、会社の純資産がマイナス(いわゆる債務超過)となっている場合は、注意が必要です。
例えば、純資産額が▲1,000万円、役員からの借入金が1,500万円ある会社で、この借入金を全額資本金に振替えるとします。役員は1,500万円の借入金の回収を諦めた引換えとして、何を得るでしょうか?答えは、純資産が500万円(1,500万-1,000万円)しかない会社の株式を得ます。要は1,500万円の投資に対し、500万円の価値しか受けていないのです。逆に、会社の視点では、1,500万円の借入を返済しなくて済むという利益を得たにも関わらず、その代価として500万円の価値しかない株式しか発行していないことになります。会社は1,000万円得したことになるので、この得した1,000万円が債務免除益とみなされ、法人税の課税対象とされます。
もっとも、債務超過である場合には過去の赤字による欠損金が残っているのが通常です。そのため、債務免除益と欠損金を相殺することで結果として課税は生じないことが一般的だと思われます(もちろん、将来に繰り越す欠損金は減少します。)但し、債務免除益>欠損金になった場合には法人税負担が生じ、純資産が目減りするため注意が必要です。例えば、過去の赤字の原因が多額の交際費使用だった場合には、交際費の一部が損金とならないため、税務上の欠損金が決算書上の累積赤字よりも少なくなっている可能性があります。このような場合は、債務免除益>欠損金の状態が起こり得ます。役員に資金がある場合は、一旦、現金を会社へ払い込んで増資をし、その後で借入金を返済させる方が良いでしょう。現物出資ではなく、通常の増資をした上で、その資金で役員に返済することで欠損金の減少を防げます。