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労使協定方式における地域指数の考え方

投稿日: 2019-09-17 |
最終更新日: 2019-09-17 |

派遣法改正

地域指数は、派遣先が所在する場所単位で決定

労使協定方式で派遣スタッフの賃金を決定する場合、基本的な算式は、①(職種別の基準値×能力・経験調整指数)×②地域指数 です。

①については、局長通達別添1別添2より求めます。②については、派遣先の事業所の所在地を管轄するハローワーク指数を使うか、その事業所が所在すると都道府県全体の指数を使うかを、労使協定において決定します。労使協定で定める以上は、労使協定の締結単位ごとに、どの指数を使うかを選択することになります。

例えば、名古屋市中区の派遣先に派遣されるスタッフ(協定対象派遣労働者)がいる場合は、下記の指数のいずれかを採用することになります。派遣元が岐阜県の場合でも、あくまで派遣先の事業所が所在する地域で判定します。

 

地域指数
2302 名古屋中計 107.7
愛知県 105.4

 

指数が低いほど、派遣スタッフの賃金は少なくなるので、派遣会社のコスト面だけを考えると、地域指数は低い方を選択した方が有利となります。

このケースでは、愛知県全体での地域指数105.4を選択する方が有利となります。派遣スタッフの大半が名古屋市中区に派遣されているのであれば、愛知県全体を選択すべきでしょう。基本的には都心部への派遣が大半である場合は、地域全体での指数を選択する方が有利となるでしょう。なお、日本全国での指数100を使うことはできません。
一つの職種のみ派遣している派遣会社は、地域指数の選択で悩むことはあまりおきないと思われますが、複数の職種への派遣(事務派遣と製造派遣 等)を行う場合で、地域指数の選択方法を変える場合は注意が必要です。上記の例でいえば、事務派遣は名古屋中計107.7を選択し、製造派遣では愛知県105.4を選択するようなケースです。
今回の派遣法改正により、厚生労働省より公表されている資料がありますが、その中で地域指数について書かれているものをピックアップして引用します(一部、分かりやすいように表現を変更しております)

地域指数について補足された資料をチェック

一般基本給・賞与等の地域指数は、協定対象派遣労働者の派遣先の事業所その他派遣就業の場所の所在地を含む都道府県又は公共職業安定所管轄地域の指数を選択すること。

また、都道府県の指数又は公共職業安定所管轄地域の指数のいずれの地域指数を選択するかは、基本的には労使の選択に委ねられるものであるが、協定対象派遣労働者の賃金を引き下げるなど、恣意的に地域指数を使い分けることは、労使協定制度の趣旨に照らして適切ではなく認められないことに留意すること。

この他、一つの労使協定において、都道府県内の指数及び公共職業安定所管轄地域の指数を使い分ける場合には、その理由を労使協定に記載すること。

 

複数の職種を扱う派遣会社で、派遣元の事業所が職種別に分かれていないケースですと、指数を使い分ける場合は、その理由を記載することになります。原則は、職種が違えど、一つの労使協定における地域指数は統一ということになります。

労使協定方式に関するQ&A  より

問1-3. 数か所の事業所を労使協定の一つの締結単位とすることは可能か。(例:関東地方に所在する事業所で労使協定を締結)

答 .差し支えない。ただし、待遇を引き下げることなどを目的として、数か所の事業所を一つの締結単位とすることは、労使協定方式の趣旨に反するものであり、適当ではなく、認められないことに留意すること。

また、この場合、比較対象となる一般賃金を算定する際の地域指数については、協定対象派遣労働者の派遣先の事業所その他派遣就業の場所の所在地を含む都道府県又は公共職業安定所管轄地域の指数を選択することに留意すること。

さらに、数か所の事業所を労使協定の一つの締結単位とする場合、派遣労働者が多数となり、派遣先の業種、派遣先地域も多岐にわたって賃金体系等が複雑となり、複数の事業所の派遣労働者全体の利益を適切に代表する過半数代表者を選出することが困難となる可能性があることから、数か所の事業所を労使協定の締結単位とする場合には、過半数代表者が民主的手続に基づいて選出されるよう、特に留意する必要がある。仮に過半数代表者を適切に選出していないと認められた場合には労使協定方式が適用されず、法第 30 条の3の規定に基づき、派遣先に雇用される通常の労働者との均等・均衡待遇を確保しなければならないことに留意すること。

 

複数の事業所で、まとめて1枚の労使協定を適用させることは可能となります。ただし、あくまで都道府県ごとに、いずれの地域指数を選ぶかは決めないといけません。選択できます。なお、話は変わりますが、労使協定が法的に有効なものであることが改めて強調されています。無効な労使協定と認定された場合は、派遣先均等・均衡方式で賃金を決めるということになるので注意が必要です。労使協定における過半数代表者の選出の手順は、今後チェックの対象となるポイントだと推測されます。

 

問2-9 .複数の地域に派遣している場合、その複数の地域の地域指数の平均値を使うことは可能か(例えば、東京 114.1 と埼玉 105.5 に派遣される可能性があるので、109.8 を使う)。

答. 認められない。派遣先の事業所等ごとに当該事業所等の所在地に係る地域指数を乗じて算出した一般賃金の額と同等以上でなければならない。

例えば、ご指摘の例の場合、東京都に派遣されている間の賃金は、東京又は東京都内のハローワークの地域指数を乗じて算出した一般賃金の額、埼玉県に派遣されている間の賃金は、埼玉又は埼玉県内のハローワークの地域指数を乗じて算出した一般賃金の額と同等以上でなければならない。

 

複数の都道府県に派遣している場合でも、地域指数の選択は、あくまで派遣先の事業所ごとに行います。平均値や中央値などが選択できる特例もなく、派遣元が独自に判断するものではないことを改めて強調しています。

不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル労働者派遣業界編 より

地域指数は、都道府県別とハローワークの管轄別に示されますので、派遣労働者の就業場所に応じて地域指数を選びます。この際、例えば、同じ都道府県の中で、賃金の低い地域はハローワークの管轄別の数値、賃金の高い地域は都道府県別というように、恣意的に、地域指数を使用してはなりません。(P85)

 

賃金を低くする理由で、同じ都道府県内で地域指数を使い分けることはできません。使い分ける場合は、別の理由が必要となります。例えば原則として都道府県の平均を使うが、派遣先が所在する管轄のハローワークの指数の方が高い場合は、高い方を採用する等が考えられます。私見ですが、採用・処遇の改善に繋がる理由であれば合理的であると考えられます。

いずれにしても、改正派遣法施行時に決めた地域指数を翌年以後変更することで、不利益変更となる場合は相当の理由が求められるので、2020年3月までの当初の労使協定での決定は慎重に実施したいところです。

 

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