同一労働同一賃金ガイドラインのたたき台(派遣労働者に関する部分)
労働政策審議会の同一労働同一賃金部会は2018年9月10日、働き方改革関連法で企業に求められる「同一労働同一賃金」について、派遣労働者を対象としたガイドライン(指針)のたたき台を示しました。2020年4月に施行され、正式なガイドラインもそのときには公表されます。原則は、均等・均衡方式です。
とはいえ、多くの派遣元会社は、新たな派遣法30条の4に定義されている労使協定方式を選択し、派遣スタッフ(協定対象派遣労働者)の賃金については、次の2つの条件を共に満たす方法で決定することになると思われます。このガイドラインでの運用はしないわけです。
(ロ)派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項の向上があつた場合に賃金が改善されるものであること
イメージとしては、(ロ)何らかの評価制度と連動した賃金テーブルにより派遣スタッフの賃金を決定し、それが(イ)厚生労働省が定める賃金以上となっている(事実上の派遣スタッフの最低賃金)と考えると良いでしょう。
派遣スタッフは常に同じ派遣先で仕事をするとは限らず、派遣先が変わることは珍しくありません。そのたびに賃金水準を変更するということは非常に煩雑でもあるので、現実には30条の4の運用をしない派遣元会社は少数ではないかと推測していますが、この30条の4に沿った運用をしない派遣元会社は、派遣先の社員の賃金水準と均衡した金額で賃金を定める(均等・均衡方式)ことになります。その具体的な内容が、今回のガイドラインたたき台に記されています。
そのなかで基本給についての記載がありますが、これを本当にやることは困難だと改めて感じます。基本給について、4つのパターンが記載されています。
② 〃 労働者の業績または成果に応じて支給する場合
③ 〃 勤続年数(派遣先での就業期間)に応じて支給する場合
④昇給について、労働者の勤続による能力の向上に応じて行う場合
同一労働・同一賃金ですので、派遣スタッフと同様の仕事をしている派遣先で直接雇用されている従業員(比較対象労働者)がもらう給与の金額が、どのように決定されているかを先ず把握しないと、どうにも進められないという結論になります。賃金規程などの開示がないとどうにもなりません。もちろん、30条の4に沿わない派遣元会社に対しては、派遣先は比較対象労働者の待遇を開示する義務はあるわけですが、開示された規程を理解するのも一苦労です。
やはり、30条の4に沿った運用をするのが現実的だと思われます。なお、一つの派遣元会社において、派遣先の労働者との均等・均衡方式と労使協定方式を併用することはできます。 協定対象派遣労働者のみが労使協定方式となり、他のスタッフは均等・均衡方式でもOKです。ちなみに派遣先に協定対象派遣労働者であることを通知することが、派遣元会社には義務付けられます。
2019年は派遣会社にとって、評価・給与制度を構築に追われる一年になるのでしょうね・・・。