2020年4月10日時点の雇用調整助成金(派遣会社が申請するときの問題点)
※本投稿は、随時最新の情報に変更するため、過去の投稿と内容が異なることがございます。
雇用調整助成金の緩和が打ち出され、現時点(2020年4月10日時点)で、多くの派遣会社が派遣スタッフの一時休業を検討していると推測されます。有期雇用派遣スタッフの多い会社では、休業ではなく更新をしないケースも増えています。
休業させるケースでは、間違いなく雇用調整助成金の利用を考えると思いますし、弊社にも相談が増えていますが、助成金の緩和された情報(メリット)が強調される一方で、実際の申請書を作ることを想定して、現時点の厚生労働省のガイドブック(20200410版)を読み込むと、申請を検討している会社が考えているイメージと、実際のイメージがかけ離れていることが多いです。
現時点での申請書式から読み取れる内容を記しておきます。変更があれば、随時コンテンツは変更してまいります。
○ガイドブック https://www.mhlw.go.jp/content/000621160.pdf
○各種帳票 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyouchouseijoseikin_20200410_forms.html
新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金の特例措置の拡大 より引用
雇用調整助成金の金額イメージ
「解雇しなければ、休業中の賃金を最大90%補填してくれるのだよね?」こう思われている方も多いと思います。厚生労働省が発表している上記を見ると、そういう印象を受けるのも無理はないかもしれません。
先ず、この助成率9/10(中小企業の場合)は、休業前の賃金に対して乗ずるものではありません。ましてや実際に休業するスタッフのみの賃金で計算するものではありません。助成率を乗ずる前の、「1人あたりの基準賃金」は下記となります。この基準賃金に対して助成率90%を乗ずることになります。
1人あたりの基準賃金額 = 【①÷(②×③)】×④
①前年度の労働保険申告書に記載されている1年間の賃金総額(雇用保険被保険者分)
②前年度の雇用保険被保険者数の月平均人数
③前年度の年間所定労働日数
④休業手当の支払い率(就業規則または休業についての労使協定で決める)
算式で考えると難しいのですが、雇用保険被保険者に支払った賃金の平均日額を算出して、それに④の休業手当の支払い率を乗じたものが1人あたりの基準賃金額となります。
休業中は仕事をするわけではないので、通常時の賃金を100%補償することは労働基準法では求めていません。平均賃金の60%以上を支払えばよいと記しています(労働基準法26条)。この「60%以上」の部分が④となります。もちろん100%補償しても問題はないのですが、その分会社の持ち出しは増えることになるので、休業せざるを得ない状況で補償率を60%超とする会社は少数になると思われます。通常は60%となるでしょう。
つまり、基準賃金日額×60%×90%×延べ休業日数が、会社に支給される助成金額となります。敢えて分かりやすい表現にすると、全社員の1日あたり賃金の平均額×54%×延べ休業日数が助成金額と考えても、概算額の目安は外さないでしょう。延べ休業日数とは、休んでいる人の数×休んだ日数と考えてください。
派遣スタッフ・内勤スタッフ合わせた賃金(労働保険料申告書に記載された賃金総額がベースとなる。賞与も含む。)の1日あたり平均額の54%です。現時点での雇用調整助成金支給申請書(様式第5号)をチェックしていただくと、よりイメージが掴みやすいです。
なお、「雇用保険被保険者ではない休業者についても補填されるのでは?」とのご指摘があると思いますが、それは補填対象となる人のことであり、助成金の計算における賃金は、あくまで雇用保険被保険者に対する賃金総額(繰り返しますが、前年労働保険料申告書に記載された額)から算出します。
休業者の人数によっては助成金の対象とならない
この助成金は単純に1日でも誰かを休業させれば支給されるものではなく、休業の規模が相当のものであることが条件となります。
相当のものとは、休業延べ日数が所定労働延べ日数の2.5%以上(2020年4月10日に5%→2.5%に改正あり)であることです。仮に月間の所定労働日数が20日の会社ですと。20日×2.5%=0.5日となり、半日を全社員休業させる規模でないと支給されません。
例えば、一部の派遣先のみが休業となり、そこで勤務する派遣スタッフのみを休業させるケースを考えてみましょう。
全体の雇用保険被保険者数 | 100 | ① |
所定労働日数 | 20 | ② |
休業する派遣スタッフ数 | 5 | ③ |
休業日数 | 4 | ④ |
休業する派遣スタッフの休業延べ日数(A) | 20 | ③×④ |
全体の所定日数(B) | 2,000 | ①×② |
このような一部限定的なスタッフのみ休業させるケースですと、休業延べ日数は所定労働延べ日数の2.5%未満となることがあり得ます。このケースだとA÷B=1.0%となってしまい、助成金の対象とならない休業となります。
この助成金は本当に全社的に休業させざるを得ない状況時の休業手当を54%補償するものであり、限定的に一部の派遣スタッフのみを休ませるケースでは、助成金の対象とならないこともあるとイメージしておくと良いでしょう。ちなみに休業させたからといって社会保険料が免除されるわけではないので、この点も憶えておきましょう。
政府の更なる追加支援を期待したいところです。新たな情報が入り次第、皆さまにもお伝えしてまいります。あくまで4月10日時点での情報であることは、ご留意ください。