コロナショックにおける派遣契約解除と一時休業の補償の違い
派遣契約期間の途中解約のルール
2020年4月19日付日本経済新聞の有料記事(派遣雇用、数十万人減も 「リーマン超え」の恐れ)にもありましたが、派遣スタッフの雇用継続が危ぶまれています。多くの有期雇用派遣スタッフが2020年5月で雇止めの影響をうける懸念がでています。
有期雇用契約における雇止め イコール 契約更新をしないこと、そのものはあくまで「有期」の契約であるため、その行為自体は問題はありません(労働契約法19条の適用を受けない前提です)。
問題は、派遣契約が途中で打ち切られたことに伴い、雇用契約期間が残っているのに解雇をする場合です。この場合は派遣法においては制限を設けています。
先ず、派遣先は派遣契約期間の途中で契約解除を行う場合、相当の猶予期間をもうけて事前に派遣契約の解除を申し出ることが求められています。いきなり明日から契約解除というようなことは、派遣スタッフ・派遣元会社側に大きな問題がない限りはしてはならないということになります。相当の猶予期間内に、新しい就業場所を斡旋して派遣スタッフが継続して仕事ができるようにすることが第一となります。
労働者派遣法29条の2に次の記載があるからです(赤テキストは、当方で追加したものです)①→②→③のステップを踏むことになります。
とはいえ、①ができるのであればそもそも解除しないでしょうから、事実上は難しいと言えます。とはいえ、新しい就業場所の確保ができなかった場合でも、派遣元会社はそれに連動して派遣スタッフを途中で雇止め(賃金ゼロの解雇)はできません。
派遣元会社は、派遣スタッフの雇用期間が継続している間に仕事がなくなった場合、これは単なる会社都合であって派遣スタッフ側に非はないため、仕事がなくとも所定通りの給与を払って会社の指示通りに勤務(例えば教育訓練を受ける)させるか、休業させて労働基準法に定める休業手当を支払うかのいずれかを選択します。つまり上記②に該当することになり、この場合は派遣先は休業手当実費の最低保証をする義務があるわけです。
なお、この場合、派遣元は雇用調整助成金を申請することが可能です。これは、派遣先から休業手当相当額を受け取る・受け取らないに関係なく実際に休業をさせているのであれば、申請することができます。(2020年6月30日までの緊急対応期間とそれ以後で制度内容が異なるのでご注意ください)
そして、派遣元が休業させてもその後の就業機会を作れないと判断し、派遣期間の途中で解雇せざるを得ないときは労働基準法20条に定める解雇予告手当に相当する額を派遣先は派遣元に支払うことになります。解雇予告手当は最大で30日分の平均賃金を補償するものであるため、これも②に含まれます。③は派遣元での内勤スタッフとしての雇用や他社への就職あっせんとなります。
事実上、②一択となるのは、今回のコロナウイルスにより経済の火急時には避けられない面はあります。具体的な内容は派遣先が講ずべき措置に関する指針に記載されています。下記です。
分かりやすくいえば、派遣元が派遣スタッフに支払わないといけない、労働基準法で定められた最低コストは派遣先が負担する義務があるということになります。契約期間内の解雇のため、1ヶ月を超える契約期間が残っている場合については最低限の解雇予告手当のみで良いとはいえず、本人の合意がない場合は、休業手当プラス解雇予告手当の組み合わせも検討せざるを得ないでしょう。(なお、解雇の場合は緊急雇用調整助成金の支給率が10%下がります)
新型コロナウイルス感染症に関するQ&A(労働者派遣について)もアップされています
派遣基本契約書にこの負担義務が書いてないか負担する必要はないという派遣先もあるかもしれませんが、今まで述べたとおり法定されていることですので、契約書の記載の有無に関係なく負担義務はあります。
今回の記事は、派遣法が改正されたということではありませんが、改めて厚生労働省より下記のパンフレットも2020年4月10日に公表されています。チェックしておきたいところです
なお、契約の途中解除ではない「単なる一時休業」については、派遣先の補償義務は明記されておらず、これは派遣基本契約書または個別契約書に一時休業時の補償の定めがなされているかどうかに拠ります。今回のケースでは話し合いにより決める場面も多くなることでしょう。今回のQ&Aにも次の記載があります。
この「改正新型インフルエンザ特別措置法」は、新型コロナウイルス感染症を、新型インフルエンザ等とみなして適用されます。
あくまで、途中解約と一時休業は扱いが異なるわけです。