労使協定方式の運用状況の調査が増えています
労使協定方式の運用に絞った調査
労使協定方式の適用が令和2年4月1日より開始して2年目になります。令和3年4月1日から同方式に基づく賃金改定も実施した派遣会社も多いと思います。新設の派遣会社は別として、どの派遣会社も労使協定の締結・更新というステップを踏んだところで労働局としては、あらためて労使協定の運用が正しくなされているかの調査を行う動きがでているようです。
いわゆる調査の場合、派遣法全般が調査対象になりますが、労使協定方式の運用だけに絞った調査の依頼もでてきています。パターンとしては、①直接の調査もしくは ②労働局より調査票が届き、それに回答することで完了するの、2つがあります。①②ともにポイントは、『時給の額』です。
調査票が届くパターンでは、下記の提出が求められることが多いようです。
(1)派遣法30条の4第1項の規定に基づく労使協定の運用に関する調査票【A4 2枚】
(2)協定対象労働者のうち、最下位の評価(ランク付け)を受けた者1名の賃金台帳
【複数職種の派遣を行っている場合は2職種分】
調査票の内容
調査票の記載内容は、概ね下記であることが多いです。当然ですが、労使協定の対象となる派遣スタッフ(協定対象派遣労働者)に限定しての質問となります。
具体的には、次の3つのうち、どの方法を採用しているかの確認となります。
① 週の所定労働時間から計算する方法
➡ 月給 × 12ヶ月 ÷ 52週 ÷週の所定労働時間
② 1年間における月の平均所定労働日数から計算する方法
➡ 月給 ÷ 【(365日-年間休日数)÷ 12ヶ月 × (1日の所定労働時間数)】
③ ①②以外の方法
➡ 具体的に計算方法を記入
①②については、労使協定方式に関するQ&A の記載のとおりです。もちろん①②以外の方法でも合理的な計算方法であれば問題ありません(月給に固定残業代を含む場合は注意。後段で補足します)
いずれの状況かを確認する内容となっています。
☑ A すべての協定対象派遣労働者について、該当する等級を定めている
☑ B 該当する等級が定かでない協定対象派遣労働者がいる
ただ、該当する等級が定かでないということは、適切な評価をしていないということの裏返しです。Bを選ぶということは運用に問題があるということになります。
こちらも、次のいずれの状況かを確認する内容となっています。
☑ C 固定残業代を含めていない。または固定残業代を採用していない
☑ D 固定残業代を含めて、一般賃金と比較している
これもDを選択すると問題があります。理由は、労使協定方式に関するQ&A【第2集】の次によります。
つまり、残業の割増率を乗ずる前の時給で比較してくださいということになります。局長通達で示されている一般賃金は残業手当を含んだものではないためです。そのため、前述したように固定残業代を含めて比較して、一般賃金をわずかに上回る水準では運用が正しくない(一般賃金を下回っている)ということはあり得ます。
もちろん、結果的に一般賃金を上回っていれば運用自体は問題ないですが、指導は受けることになります。例えば、所定労働時間8時間、週5日勤務のフルタイムのスタッフであれば固定残業20時間とすると、月給者における一般賃金と比較する時給は下、記で計算することになります。
月給 × 12ヶ月 ÷ 52週 ÷(週の所定労働時間40時間+固定残業20時間×割増率1.25)
具体的には、次の5つが多いようです。
①氏名
②労使協定でのランク(評価結果)
③職種
④派遣先の場所(都道府県・市町村)
⑤備考
なお、⑤備考には、前述した固定残業代を含めている場合は、その固定残業代を記載することが要請されています。月給者に対しては、この固定残業代を含めて一般賃金と比較しているケースが散見されているのだろう、と労働局は考えているのでしょう。
良くも悪くも、『時給』が派遣法に定める水準で適切に支給されているかが問われ、評価そのもののプロセスなどは問われない傾向にあるようです。