有期契約派遣スタッフの雇用安定措置
前回の雇用期間と次回の雇用期間との間に雇用していない期間(いわゆる空白期間)が生じる場合、雇用安定措置の基準である通算雇用期間はどのようにカウントされるのか?今回は、有期契約派遣スタッフの雇用安定措置についてまとめてみました。
そもそも雇用安定措置とは?
事業所単位の期間制限は、派遣先の過半数労働組合等の意見聴取手続により派遣受入期間を延長することができますが、個人単位の期間制限は延長措置が設けられていません。有期契約の派遣スタッフは、同じ組織単位で最長3年までしか働くことができないため、その後の雇用安定措置を派遣元事業主に義務付けたものです。
◆労働者派遣事業関係業務取扱要領抜粋
派遣元事業主は、個人単位の期間制限(同じ組織単位で 3 年)に達する見込みの派遣労働者に対し、派遣労働者が引き続き就業することを希望する場合は、以下のいずれかの措置を講じなければならない。(法第 30 条第2項)
① 派遣先への直接雇用の依頼
② 新たな就業機会(派遣先)の提供
③ 派遣元事業主において無期雇用
④ その他安定した雇用の継続が確実に図られると認められる措置
このうち、①を講じた場合に、直接雇用に至らなかった場合は、その後②から④のいずれかを講ずるものとする。(則第 25 条の2第2項)
1 年以上継続して派遣先の同一の組織単位に派遣された派遣労働者が、個人単位の期間制限に達する前に当該組織単位での派遣就業を終了する場合であって、派遣労働者が引き続き就業することを希望するときには、派遣元事業主は、上記①から④までのいずれかを講ずるよう努めるものとする。
上記に加え、当該派遣元事業主に通算して1年以上雇用された有期雇用派遣労働者(雇用しようとする者を含む)に対しては、②から④のいずれかの措置を講ずるように努めなければならない。
上記の雇用安定措置のうち、③「派遣元事業主において無期雇用」とは、派遣元事業主における直接雇用のポストを提示することであり、具体的には、派遣元における営業や派遣労働者を管理する仕事等を指します。
職種は派遣労働者のままで、雇用期間を「有期契約」から「無期契約」にする場合は、②の新たな就業機会の提供に該当します。
また、④「その他安定した雇用の継続が確実に図られると認められる措置」とは、派遣労働者の雇用の継続が確実に図られる措置であれば教育訓練に限定されるわけではなく、例えば、派遣元事業主が職業紹介をできる場合にあっては派遣労働者を職業紹介の対象とすること(ただし雇用に結びついた場合に限る)等も含まれます。
クーリング期間の適用は?
事業所単位の期間制限、個人単位の期間制限の両方に、いわゆる「クーリング 期間」の考え方が設けられます。
派遣先の事業所における同一の組織単位ごとの業務について、労働者派遣の終了後に同一の派遣労働者を再び派遣する場合、派遣終了と次の派遣開始の間の期間が3か月を超えないときは、労働者派遣は継続しているものとみなされます。
つまり、前回の雇用契約終了日から継続して3ヶ月以上空白期間があれば、そこで一旦リセットされるため個人単位の期間制限に抵触せず、雇用安定措置を講ずる必要もないということです。
ただし、派遣先が、事業所で3年間派遣を受入れた後、派遣可能期間の延長手続を回避することを目的として、「クーリング期間」を空けて派遣の受入れを再開するような、実質的に派遣の受入れを継続する行為は、法の趣旨に反するものとして指導等の対象となりますので注意が必要です。
個人単位の期間制限は、派遣元が異なっても同一人物と評価されてしまう!?
ここでご注意いただきたいのは、個人単位の期間制限は、「個人」に適用されるため、派遣元の会社が異なっても同一人物と評価されてしまうことです。場合によっては、下記の事態が生じる可能性があります。
例)前職退職後3ヶ月以内に転職した場合で同じ派遣先(C社)で働くことになった場合
前勤務先A社(派遣元) 派遣先C社製造課で2年間勤務
現勤務先B社(派遣元) 派遣先C社製造課で1年以上派遣見込み
現勤務先のB社での雇用が始まったばかりですが、通算3年以上C社の製造課(同一の組織単位)に派遣見込みであることから、B社は入社当初から雇用安定措置義務が生じることになります。
事例からもわかるように、雇用安定措置義務が生じるのは雇用期間ではなく、同一の組織単位に3年以上派遣する見込みがあるかどうかで決まります。そのため、新規採用時、再契約時に下記①②の確認をされることをお勧め致します。
① 空白期間中に他の派遣会社から同じ派遣先で働いていたか否か及びその期間
② 新規採用者が以前に同じ派遣先で働いていたか否か及びその期間
期間制限の管理は派遣先の責任ですが、雇用安定措置の義務は派遣元です。
また、派遣先は派遣労働者個人単位の期間制限に違反することをもって、派遣元に対し、派遣労働者の交代を要求することができます。
改正法施行から3年間はあまり問題になることはないと思いますが、今の内から仕組みを整えておかれることをお勧め致します。