求人募集(新卒者向け)の際に職場情報を提供することが義務付けられます
平成28年3月1日から新卒者向けの求人募集をしている会社を対象に、応募者から情報開示の求めがあった場合には、労働条件の他に『平均勤続年数』や『研修の有無及び内容』、『平均有休取得日数』といった就労実態の職場情報も併せて提供することが義務付けられました。情報提供の仕組みや有料職業紹介事業者が留意すべき点について整理してみます。
職場情報の提供が義務付けられるケースとは?
新卒者等(※)であることを条件とした募集・求人申込みを行う会社が対象です。
職場情報の提供が義務付けられるケースは、①応募者(または応募予定者)から求めがあった場合、②求人申込みをしたハローワークや人材紹介会社から求めがあった場合と③求人紹介を受けた者(受けようとする者)から求めがあった場合です。①と③については『求めがあった場合』に情報提供が義務付けられますので、求めが無ければ情報提供しなくても違反となりませんが、ハローワークは求人申込み時に情報提供が必要です。
※新卒者等とは、①学校(中学校以上)、専修学校、各種学校、外国の教育施設に在学する者で卒業見込みの者、②職業訓練を受ける者で修了見込みの者、③左記①②の卒業者及び修了者(卒業・修了後3年程度)をいいます。
但し、新卒者等の定義に該当する場合であっても、例えば『大学卒業者限定』としている求人に対し、専修学校卒業見込み者など対象外の者は、情報提供を求めてきても回答する必要はありません。
職場情報提供項目とは?
次の(ア)~(ウ)の3類型それぞれについて一つ以上の情報提供が義務付けられます。
(ア)募集・採用に関する状況
・過去3年間の新卒採用者数・離職者数
・過去3年間の新卒採用者数の男女別人数
・平均勤続年数
※可能であれば平均年齢についても参考値として情報提供することが望ましい。
(イ)職業能力の開発・向上に関する状況
・研修の有無及び具体的な研修内容(※就業規則等に制度の定めが無くても継続的に実施していれば「有」でOK)
・自己啓発支援の有無及び内容
・メンター制度の有無
・キャリアコンサルティング制度の有無及び内容
・社内検定等の制度の有無及び内容
(ウ)企業における雇用管理に関する状況
・前年度の月平均残業時間実績
・前年度の平均有休取得日数
・前年度の育児休業取得対象者数・取得者数(男女別)
・役員に占める女性の割合及び管理的地位にある者に占める女性の割合
【ここで注意!】
1.企業全体の雇用形態別の情報を提供することが必要です。例えば、正社員として募集・求人申込みを行う場合は正社員に関する情報を、正社員以外の雇用形態で募集・求人申込みを行う場合は正社員以外の直接雇用の労働者すべてに関する情報を提供することとなります。つまり、平均残業時間時間や平均有休取得日数は、雇用形態別に算出しなければならないということになります。
2.企業グループ全体として募集・求人申込みを行い、「グループ傘下の各企業への配属は入社時点で決定する」といった採用形態の場合は、配属する可能性のある企業それぞれについて情報を提供する必要があります。
情報提供の方法は、原則書面等に残る形で
以下の方法により、情報提供を行うよう求められています。
①ホームページでの公表、会社説明会での提供、求人票への記載などによる、自主的・積極的な情報提供
②応募者等から個別の求めがあった場合は、メールまたは書面による情報提供
また、情報提供が義務となる「求め」の方法は、応募者等が、メールまたは書面等により以下の事項を企業に対して伝えることではじめて情報提供が義務付けられます。
②連絡先(住所またはメールアドレス)
③所属学校名、在学年または卒業年月
④情報提供を希望する旨
※説明会や面接等のほか、企業に提出済みの履歴書等により本人確認できる場合は、口頭(電話も含む)による情報提供の求めに対し、口頭で回答することも可能です。
端的に言えば、応募者等が名乗らずに会社の情報提供だけ求めた場合は、回答しなくてもよいということです。
ハローワークに新卒者等の求人を出す場合は、「青少年雇用情報シート」の提出が必要となります。
不利益な取り扱いは禁止です
「情報提供の求め」を行ったことを理由として、採用選考に関する情報を提供しなかったり、面接時に情報提供を求めた事実に触れることなど不利益な取り扱いは禁止されています。
人材紹介会社はここが注意!
企業から新卒者等の求人申込みを受理する際は、求職者の変わりにすべての職場情報を提供するよう働きかけ、新卒者等に対する職業紹介に活用することが望ましいとされています。また、就職支援サイトを運営する場合は、企業の職場情報について、可能な限りすべての項目が掲載されるように取り組むことが求められています。
新卒者等の求職者から人材紹介会社に対して個別に照会があった場合は、人材紹介会社から企業に雇用情報の提供を求めること、照会を行った求職者に関する情報を企業に明示しないこととされています。
なぜこのような情報を提供しなければならないかといいますと、国がブラック会社の見極めを強化したからです。ハローワークに新卒者等の求人申込みを行う場合は、上記の職場情報をすべて開示することになります。さらに、28年3月1日より、ハローワークは一定の労働関係法令違反の求人情報を不受理とすることができるようになります。離職率が高い会社や残業が多い会社にとってはナーバスな問題です。どの企業も従業員の雇用改善に向けて本格的に向き合わなければならない時代になったということですね。