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サービス残業(残業代の不払い)の情報は、すぐネットにアップされます。

「残業代をまともに払っていたら利益が出ないよ。」、「うちは大企業じゃないのだから。」という声も聞こえてきそうです。確かに、経営者にとっては目を背けたい問題です。ですが、実際に有名な大企業が数十億円の残業代の支払を求められています。中小企業にとっても年々大きな問題となっています。「今の給与には残業代も含まれている、と従業員に話しているから大丈夫。」と認識されている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、サービス残業の問題を、労働基準法に違反せずに解決するには、給与のうちのどこまでが残業代部分であるかを明示しなければなりません。今回は「残業代込みの給与」について考えてみましょう。

 

下記の条件で残業代込みの給与と、残業代は別に支払う給与を比較してみましょう

(今回は、深夜労働・休日労働はないものとします。)

基本給 30万円 月所定労働時間 176時間(※) 月残業時間 20時間
(※)1 日8時間×1ヶ月の平均労働日数22日

A:20時間までの残業代込みで、月給30万円の場合

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B:月給30万円で、残業代は別に支払う場合

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同じ月給30万円にもかかわらず、Aでは20時間残業させても問題なし。Bの場合は、残業代42,625円を支払わないと労働基準法違反となります。

Aのしくみですが、残業代を計算するには、まず残業代を除いた給料を所定労働時間で除した時間単価を算出し、その時間単価に残業時間及び時間外残業の法定割増率を乗じて算出します。この時間単価ですが、Bの場合は、単純に 300,000 円÷176 時間でいいのですが、Aの場合は、所定労働時間は分かっているものの、残業代を除いた給料が分かりません。ここで時間単価を Xと置くと、残業代を除いた給料は次のイメージ図のようになります。

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時間単価は、残業代を除いた給料を所定労働時間で除するのですから、 300,000 円-(X×20 時間×1.25)÷176 時間となり、これを変形すると、 X=300,000 円÷(176 時間+20 時間×1.25 )となり、A のようになるわけです。

残業代込みの給与制度導入のためにクリアすべき問題

Aのような給与体系を導入するには、下記の用件を満たす必要があります。

 

① 就業規則・雇入通知書の整備(労働条件の書面による明示)
給与の中に残業を何時間分含めているか、そして、含められている残業時間を超えて働いたときは、残業代を別途支払う旨を就業規則・雇入通知書に記載しておく必要があります。Aの場合では、20時間を超える残業をした場合には、その超えた分の残業代については、30万円に上乗せして支払わなければなりません。そのため、正確な労働時間の把握は不可欠となります。「全ての残業代を含めているから、労働時間なんて管理しなくてOK」では問題になります。どれだけ残業しても30万円ポッキリという契約は、労働基準法では残念ながら認められていません。

② 最低賃金を下回らない
前頁のAのように、込みにする残業時間を多く設定すると、その分だけ時間単価は減少します。その結果、時間単価が最低賃金(愛知県では800円 2015年4月現在)を下回ってはいけません。 また、最低賃金を守っていれば残業時間をどれだけでも多くしてよいというわけではなく、1年間で360時間が限度とされています。

③ 労働者の個々の同意を得る
Bの場合、時間単価は1,705円です。しかしAのように20時間分の残業を込みにすれば時間単価は1,493円まで下がります。これは労働者の不利益となるため、従業員個々に説明し書面で同意を得るようにすれば、後々の従業員とのトラブルを未然に防ぐことができます。

 

労働基準監督署やユニオンへの「不当解雇」や「残業代未払い」に関する労働者の相談は増える一方です。最近はテレビやインターネットなどの影響により、労働者の権利意識が高まっています。御社の従業員が、労働基準監督署に「残業代が支払われていない!」と駆け込んでからでは遅いのです。その従業員の残業代だけでなく、他の従業員の残業代も追加で支払わされることになり、会社の経営に多大な影響を与える可能性があります。SNS等にそのような情報がアップされると採用も難しくなり、大きなイメージダウンにつながります。そうなる前にも、早急にしっかりとした対策を立てる必要があるでしょう。

上記①②③が明確でないと「残業代が支払われていない」とみなされてしまい、結局、残業代を請求される可能性があります。定額残業代制度(みなし労働時間制度)は残業代を節約するメリットがありますが、単に人件費削減のためだけに導入してしまうと、今まで残業代が支給されていた人は給料が減り、モチベーションの低下につながってしまう恐れもあります。しかしながら制度としては、「労働時間イコール仕事の成果」とはならない仕事には適した制度だと思います