派遣許可の更新時の財産的基礎要件の特例が公表されています。
更新申請の特例措置により1年猶予?
派遣業・有料職業紹介事業の両方とも、「許可更新」時に一定の資産要件を満たす必要があります。
ただし、新型コロナウイルスの影響を受けたことで業績が急激に悪化することで純資産が急激に減少し、いわゆる「財産的基礎」をクリアできずに更新を断念せざるを得ない会社が増えてくることが予想されるのでしょう。令和2年10月2日付で、下記の業務連絡が厚生労働省より公表されています。
対象は、令和2年10月31日~令和4年3月31日までの申請期限(許可の期限日ではなく申請期限日)の更新が必要な会社です。財産的基礎を満たさなくとも、1年間仮更新されるイメージです。もちろん資産額以外の要件については満たす必要があります。
原則(従来)は、許可申請期限の直前の決算書(※)で、次の財産的基礎(貸借対照表で判断)をクリアしてなければ更新できませんでした。更新できない イコール 許可取り消しとなり、営業はできなくなります。
派遣業更新での財産的基礎に関する判断(すべてクリア)
①資産(繰延資産及び営業権を除く。)の総額 - 負債の総額を控除した額(以下「基準資産額」と呼びます。)≧ 2,000万円×許可を受ける事業所数
②基準準資産額>負債の総額の×7分の1以上ある。
③会社名義の現金・預金の額が、1,500万円×派遣許可を受ける事業所数以上ある。
有料職業紹介更新での財産的基礎に関する判断
①基準資産額≧350万円×許可を受ける事業所数
今回の特例により、直前の決算年度に、令和2年1月24日以後の期間が含まれる場合は、次の2パターンのいずれかに該当すれば1年間許可は取り消されません。
(※)直前の決算書に代えて、公認会計士または監査法人による監査証明を受けた、中間決算または月次決算書でもOKです。
●パターン1(更新期限が迫っている)
→ 直前の決算年度に、令和2年1月24日以後の期間が含まれているケース
下記AかBのいずれかで財産的基礎をクリアしていればOK
A.直前の決算書
B.直前決算の前年度の決算書
●パターン2(パターン1ほど期限が迫ってなく、1年以後に更新時期がくる)
→直前の決算年度の前年度に、令和2年1月24日以後の期間が含まれているケース
下記BかCのいずれかで財産的基礎をクリアしていればOK
B.直前決算の前年度の決算書
C.直前決算の前々年度の決算書
(注意)この記事は、令和2年10月5日時点で作成しています。
例えば、令和2年9月30日決算(1年決算。仮に第3期とします)の派遣会社で、令和3年3月31日が派遣許可の更新期限とします。有効期間満了日の3ヵ月前が許可の申請期限となるルールのため、申請期限は令和2年12月31日となります。この決算は令和2年1月24日を含んでいるので、パターン1に該当します。
この場合、令和2年9月30日時点の決算書で基準資産額を満たせない状態であっても、第2期(令和1年9月30日決算)の決算書で基準資産を満たしていれば許可を更新できます。
更新はできるが、1年内に財産的基礎をクリアできる事業計画が必要
ただし、特例の適用にあたっては、許可更新日(現在の許可有効期限が切れる日)から1年内の決算で、基準資産をクリアできる見込みの「事業計画書」の提出が求められます。あくまで更新日から1年の猶予であって、1年内に財務内容を何とか改善できそうな会社だけは救済しますというイメージで考えれば良いでしょう。この事業計画書を更新申請時に添付することが必須です。上記のケースでいえば、令和2年12月31日までに、事業計画書を添付した許可更新申請書を労働局に提出することになります。
また、更にクリアしたことを証明するために、更新日の1年後から1ヶ月内(13ヶ月目)に、財産的基礎を満たした決算書を提出することになります。中間決算・月次決算でも代替可能です。
現状では、この特例を使っても財産的基礎をクリアできない場合は許可取り消しとなります。他の猶予規定は設けられていません。改めて、今後の貸借対照表の内容は重要になります。
なお、今回の特例は、あくまで「更新」に限るもので、新規に「許可」を申請する場合は、従来通りで特例的なものはありません。
PREV