派遣先均等・均衡方式に関するQ&Aがアップされました(食堂の派遣スタッフ利用)
2019年12月26日 派遣先均等・均衡方式に関するQ&Aが厚生労働省HPに掲載されました。
派遣先均等・均衡方式については、基本的な考え方は「派遣先の通常の労働者の待遇の完全コピー」です。派遣先均等・均衡方式の対象となった派遣スタッフのすべての処遇は、派遣先が提示する比較対象労働者の情報に拠るしかないので、派遣元で通常の労働者や、その処遇を選定できるものではありません。
そういう意味では考え方は非常にシンプルであり、労使協定方式が派遣元の労使で決定するものに対して、均衡・均等方式は派遣先の通常の労働者選定次第となりますし、そこにどちらかが意見できるものでもありません。
今回のQ&Aは、そういう意味では「派遣先」が意識すべき論点が中心となります。内容そのものに目新しいものは正直少ないというのは、弊社の所見ではありますが、1点派遣先のコスト増につながる論点が指摘されていますので共有したいと思います。そして、その論点は労使協定方式を採用している派遣先スタッフに該当する場合に問題となります。下記の給食施設(社内食堂)の利用料金についてです。
法第 40 条第3項の福利厚生施設の利用機会の義務について、派遣先は派遣労働者に対して、「給食施設の料金」を通常の労働者と同じ条件で利用させなければならないのか。また、給食施設の料金を同じにする場合に費用負担が発生することが想定されるが、派遣元事業主と派遣先のどちらが負担するのか。
答
派遣法第 40 条第3項の福利厚生施設(食堂、休憩室、更衣室)については、派遣先が「利用の機会を与えなければならない」と規定されており、ご指摘の「給食施設の料金」が同額でないという事実のみをもって当該規定に違反することとはならない。
ただし、派遣先の労働者と派遣労働者で「給食施設の料金」の差が大きいことなどにより、結果として、派遣労働者が給食施設を実質的に利用できない状況となっている場合には、派遣先の義務違反となり得る。
一方、「給食施設の料金」は、法第 30 条の3(派遣先均等・均衡方式)の待遇に含まれるため、派遣元事業主は「給食施設の料金」について、派遣先の通常の労働者との間の均等・均衡を確保しなければならない。このため、派遣先は、派遣料金の設定に際して、派遣労働者に係る「給食施設の料金」の負担分を考慮するなどして、義務違反とならないよう適切にご対応いただくことが必要。
法40条第3項は、労使協定方式を採用する派遣元からの派遣スタッフについても適用されます。単に利用できれば良い(利用料金の是非まで派遣法は求めていない)という判断を弊社もしていましたが、今回のQ&Aでは派遣先の通常の労働者の社員食堂の利用料金(食事代)と、労使協定方式が適用れている派遣スタッフの利用料金の乖離が大きい場合、その負担は「派遣先が負う」と明示しています。
とはいえ、どれぐらい乖離していると問題なのかというレベルの程度は記されていませんし、通常の労働者の社員食堂の利用料金と同額でなければ直ちに違反とはしないと記してますので、実際の運用指針は悩ましいところです。ただ、乖離リスクは派遣先に向かうということになります。
ポイントは金額そのものよりも、派遣スタッフの利用実績の把握なのでしょう。値段の乖離があっても利用できないほどではなければ良いので、当面は利用できる状態を継続したうえで、社食利用状況についてのアンケートを取るなどで利用実績を確認するということは必要になってくるでしょう。料金を払って利用することが強制されているわけではないので悩ましいところですが、金額そのものの是非をするよりも配慮する姿勢を先ずは示すことが重要だと思われます。
例えばプリペイドチャージ式で、食堂での料金は直接雇用でも派遣スタッフでも全員一律だけど、チャージした額から精算される料金に差を設けている会社や、社員食堂と派遣スタッフ向けの食堂が区分けされていて料金体系が異なる派遣先などは、利用者数の推移を把握するなどはやっておくべきべきだと思われます。