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労働契約法第19条を理解するための判例(有期雇用の雇い止め)

投稿日: 2015-08-29 |
最終更新日: 2018-01-25 |

気になる労務

気になる労働契約法

平成25年(ワ)第22110号 労働関係存在確認等請求事件 から考える労働契約法 第19条

タイトルの判例全文はこちらです。この判例は、労働契約法 第19条の『現実(実務)での落としどころ』を考えるうえで、なかなか面白いと思います。

 

労働契約法第19条(有期労働契約の更新等)

有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一  当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二  当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

アンダーラインを引いたところを意識して今回の判例を解説したいと思います。

 

事案の概要と結論

判例をまとめると下記のようになります。結論として被告たる会社は、原告の訴えを受け入れることになりました。

①1年の有期労働契約を結んでいた原告(従業員)が、2年目に入る。なお、2年目に入るところで雇用契約書の記載なく、更新をしています(記載がないのは、原告が昇給にあたり被告ともめていたことから拒絶していた)

②2年目終了日のおよそ3か月前(正確には72日前)に契約更新しない旨を、被告(会社)に書面で通知される。雇い止め通知書が交付されています。原告は、通知日より5日後に『雇い止め撤回要求書』という書面を被告に送付しています。つまり、有期労働契約の更新を申し出ているわけです。

③被告は、5年契約で、東京都足立区より図書館の運営を請け負っています。(5年は事業が続くと期待されうる)原告は、その司書として有期労働契約を被告と締結し、勤務していました。

④雇い止め通知書には、契約更新しない理由として『ルールが守れない、協調性がない、誠意がない等業務を遂行する能力、勤務態度が十分でないと認められるため』と記載されている。

裁判所の判断は、上記の理由では客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない。故に労働契約の更新がされたのと同様の法律関係が存在する(労働契約法19条のとおりに取り扱うということになります)

⑥原告が請求した賃金の支払いを被告は命じられました(③の図書館の運営期間の末日までの賃金を支払うことになります)。つまり、5年間雇用されると期待することはやむを得ないと裁判所は判断したわけです。

ルールが守れない、協調性がない、誠意がない等業務を遂行する能力、勤務態度が十分でない

④の雇い止めの理由ですが、裁判所の判断としては、雇用関係の継続に支障を来すような業務遂行能力の不足や勤務態度の不良があるということはできないと結論付けています。被告(会社)から提示された事実は次の通りです。

原告は、ルール遵守の意識や協調性が致命的に欠如し,自己中心的であり,職員としての立場を自覚した行動がとれていないのであって,業務遂行能力が低く,勤務態度も十分でないとし,その根拠として,

A.原告が不合理な理由で雇用契約書の提出をかたくなに拒否し続け,社会保険労務士との面談を設定したことにも感謝せず,「仕事が忙しいのに。」などと文句すら言った

B.原告が自己の勤務評定に不満があるとして,センター長及び館長に対して執ように文句を言い,センター長らに再評価をさせるに至っている。

これに対し、裁判所は下記の判断を下しました。

・雇用契約書を被告に提出しなかったものの、同月以降も引き続き図書館の副館長として勤務を続けており、原告が雇用契約書を被告に提出しなかったために,図書館の管理運営業務や被告の人事管理業務等の業務に大きな支障が生じたことは認められない。

・社会保険労務士との間で、賃金の額を含む労働条件について,未提出の雇用契約書のとおりであることを確認したのであるから、その時点までには,原告と被告との間の労働契約の内容も明確になったということができる。 また、原告の陳述書には、署名押印した雇用契約書を被告に提出しなかった理由について、契約更新に当たって昇給の希望を出しており,センター長が会社と掛け合ってくれると約束してくれたため、昇給の可能性があるのに契約書を提出するとうやむやにされてしまうと思って提出しなかった旨の記載があり、そのような理由が全く不合理であるということもできない。

・被告が社会保険労務士との面談を設定したことに対して、原告が「仕事が忙しいのに。」と不満を述べたとの点については、仮に当該事実が認められたとしても、これをもって原告の勤務態度に問題があるとまで評価し得る事情ということはできない。

上記によれば、Aによって雇用関係の継続に支障を来すような業務遂行能力の不足や勤務態度の不良があるということはいえない。

・証拠によれば、館長は原告について、「職員としての立場を自覚した行動が十分とれていない。」,「報告が少ない。」とか,「館長への報告や連絡が極めて少ない。」,「職員としての自覚が十分でない。」などといった記載のある書面を作成し、被告に提出したことが認められるが、上記各書面の記載はいずれも抽象的な表現にとどまり,そのような評価の根拠となった具体的事実の指摘はない

・上記書面には「現在,棚替え,BDS,など多忙で、休日も自宅で仕事をしている状態で、きちっとした評価をするに相当する時間がとれません。」との記載がある。(適切な評価がされていないと思われる)

以上のほかに,原告について,被告が主張するような業務遂行能力の不足や勤務態度の不良があったことを認めるに足りる証拠はない。

 

原告に非があると認定することはできないという判断になったわけですが、仮に業務遂行能力の不足や勤務態度の不良があったと立証するならば、注意書や懲戒処分の通知をするに相当する事実があった時点で、書面を用意する必要があるのだと推定できます。つまり、具体的な非たる事実の立証ですね。

この判例では、原告以外の図書館職員で、更新を拒絶された者はなく、委託期間中は司書となる資格を有する従業員を常時一定数配置しておく具体的必要性があり、期間の途中で従業員の数を減らすことが予定されていた あるいは 従業員の数を減らす必要が生じたなどの事情は認められず、むしろ、被告は,図書館業務の効率的運営や職場環境の整備といった観点から,従業員を継続して雇用するとの方針をとっていたことが認められるから、原告において、いまだ委託期間の中途である雇用期間の満了時に、本件労働契約が更新されるものと期待することには、合理的な理由があったというべきであるとされています。

期待すること自体がありえない という事実を会社が立証するのは、この判例でなくとも難しいと思われます。そうであるならば、申込みを拒絶することが、客観的に合理的であり、社会通念上相当であることを立証する書面を作っておく。

これ以外の対応は難しいと思われます。つまり、問題があると判断した社員については、よく観察し、問題行動があった時点で何らかの書面を残すこと以外の対策はないと言えます。

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